ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー : 特集
【観る前から“傑作”】映画.com「絶対に面白い」宣言
あまりに偉大な前作を超えるスケール、バトル、感動…
映画館で観なければならない、未来を切り拓く大注目作
年に何本か、鑑賞前から“傑作”であることがわかりきっており、矢も盾もたまらず映画館へ駆け込むような作品がある。
11月11日から公開される「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」は、まさにその“年に何本か”のうちの1本だ。
コミックヒーロー映画として史上初めてアカデミー作品賞を含む7部門にノミネートされた「ブラックパンサー」の続編。世界中を熱狂させた「アベンジャーズ エンドゲーム」級に偉大な前作を超えるスケール、バトル、感動が描かれるとあっては、あなたもシンプルに「映画館で観たい」とたまらなくなったはずだ。
本記事では、「ブラックパンサー」がなぜ偉大なのかの解説や、今作「ワカンダ・フォーエバー」の見どころの紹介、そして実際に鑑賞したレビューを掲載する。(※11月10日更新)
前作は「アベンジャーズ エンドゲーム」級の偉大な
傑作だった――! 世界中に与えた“消せない衝撃”
[物語のおさらい]国王とヒーロー、2つの顔を持つブラックパンサー
アフリカの秘境にありながら、誰もが想像できないような最新テクノロジーをもつ超文明国“ワカンダ”。ここには世界を変えてしまうほどのパワーを持つ鉱石“ヴィブラニウム”が存在する……。
突然の父の死によって王位を継いだティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、この国の“秘密”を守る使命を背負うことになる。ヴィブラニウムが悪の手に奪われると、人類に未来はない――。
“秘密”を狙う敵が押し寄せるなか、若き国王ティ・チャラは漆黒の戦闘スーツをまとい、ブラックパンサーとして戦う。
[とてつもなく大ヒット]興収は全米歴代6位! 世界では13億ドル(約1820億円)超!
優れた映画の基準のひとつは“興行収入”だ。「ブラックパンサー」はとてつもない大ヒットを記録し、映画の歴史に名を刻んでいる点は見逃せない。
これまでに例のないヒーローの活躍が注目を集め、さらに強いカタルシスと重厚なテーマがともなう物語・演出・映像が観客を圧倒。アメリカでの興行収入は歴代6位となる約7億ドル(約980億円/1ドル=140円換算)に到達し、「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(同7位)を凌駕する成績となった。
そして全世界に目を向けると、約13億ドル(約1820億円/1ドル=140円換算)を記録。アメリカ、世界ともに、極大ヒットと言える数字を叩き出している。
[アカデミー賞でも偉業]なんと作品賞の候補に! 3部門を受賞し世界中で称賛も
やはり映画賞で評価されることも、優れた映画をはかるうえで重要な指標となる。その点、「ブラックパンサー」はヒーロー映画としてはまさに“前人未到”を達成している。
第91回アカデミー賞では、ヒーロー映画としては史上初となる作品賞にノミネート。合計で7部門の候補となり、美術、衣装デザイン、作曲の3部門を制するなど、同年の映画賞での話題を集めていた。
正真正銘の偉業を達成した同作に、人種・年代・国を超えた称賛が贈られたのである。このことはアフリカをルーツに持つ人々へ希望をもたらし、ボーズマンさんは世界中で社会現象を巻き起こす本作の“顔”として広く知られることになった。
[歴史を激動させた傑作]「アベンジャーズ エンドゲーム」級に偉大…続編にも超期待!
そのほか、「ブラックパンサー」が残した“爪痕”は枚挙にいとまがない。その一部を以下に抜粋して記載しておこう。
■ケンドリック・ラマー(グラミー賞受賞)らが参加したインスパイア・アルバムが発表→世界的大ヒット■バラク・オバマ元大統領の夫人もSNS上で大絶賛■監督のライアン・クーグラーが、世界で最も影響力ある100人に選出まさに「アベンジャーズ エンドゲーム」と双璧をなすほど偉大な作品といえる「ブラックパンサー」。前作を超えるとされる続編「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」は、一体どれだけすさまじいのだろうか? 自分の体のなかで、興味や期待が振り切れる音すら聞こえてきそうだ。
そしてもうひとつ、重要なことに言及する。2020年8月28日、主人公ティ・チャラ役で主演したチャドウィック・ボーズマンが死去した。43歳だった。
2016年にはステージ3の大腸がんだと宣告されていた。2018年公開の「ブラックパンサー」も、闘病を続けながら撮影していたことになる。
死去の報には世界中が耳を疑い、共演者や仕事仲間たちが追悼のコメントを寄せた。「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」では、ティ・チャラ役に新たなキャストを起用することはせず、喪失を内包しながら物語を紡いでいく。
【最新作は奇跡の超大作】観る前から“傑作”と断言!
ティ・チャラの想いは、絶対に映画館で受け継ごう――
予告編や事前情報だけで、期待のバロメーターがぶち壊れるくらい興奮している自分がいる。観る前から“傑作”と断言できる理由は、前作の偉大さだけではなく、バトルのスケール感や、キャラクターの躍動の予感にもある。
[前作を超えるバトル]陸・海・空で展開! 映画館で体感すべきスケール感に超期待!
今作で主人公らが対峙するのが、海の帝国だ。国王不在のワカンダの脅威となり、陸・海・空で激しい戦いを繰り広げる。
予告編には水中を縦横無尽にかけめぐる、浮遊感と疾走感バツグンのアクションも収められている。さらにワカンダ国土での決戦や、今作の敵となる海の帝国の“謎の王”ネイモアが襲来し、空中を“蹴る”ことでビームを回避するシーンも。爆炎がのぼるなかでのカーチェイス、新たに登場する“アイアンマンの後継者”アイアンハートが空を爆進する模様などなど、スケール感たっぷりの映像ばかりだ。
アクションを盛り上げ、テンションをぶち上げる音楽にも注目。魂を直接刺激し、全身に感動を走らせるような“唯一無二の体験”をする準備はいいか? ぜひとも映画館で目撃すべきだ。IMAXや3Dで体感すれば、忘れがたい迫力のひとときを味わえるのは確実である。
[キャラクターに注目]活躍するのは誰? サプライズに超期待!
ティ・チャラ亡き後、悲しみに包まれるワカンダ王国(現実世界の私たちと同じだ)はどうなるのだろうか? 新たな脅威が現れた今、国や大切な者たちを守るため、新たなヒーローが立ち上がるに違いない。
予告編第二弾に収められていた、ブラックパンサーは果たして誰なのだろうか? ティ・チャラの妹であるシュリ(レティーシャ・ライト)や、ファンから大きな期待が寄せられるアイアンハート(ドミニク・ソーン)ら、どのように活躍するかにも注目が集まる。
なにより、マーベル映画は本編に強いサプライズがあることでもよく知られている。サプライズへの期待はもちろん、“希望と未来”というテーマがこめられた物語は、観る者の胸をアツくさせるに違いない。
[観ないとヤバい]今後の「アベンジャーズ」につながる展開…単純に超期待!
今作が現状のマーベル映画の“ひと区切り”となる(いわゆる“フェーズ4”の最終作)。今後、単独作のヒーローたちが一堂に会する二部作「アベンジャーズ ザ・カン・ダイナスティ」「アベンジャーズ シークレット・ウォーズ」(ともに原題/2025年公開予定)が控えており、今作で描かれることが同二部作に直結する可能性が高い。
つまり、「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」を観ていないと、新たな「アベンジャーズ」シリーズを120%楽しめないかも……ということだ。その意味では、必見の一作であると言える。
なによりも、チャドウィック・ボーズマンさんやティ・チャラの想いを受け継ぐためにも――可能な限り早く、映画館で鑑賞してほしいと思う。
【編集部レビュー】全身が震えるほどの興奮と感動…
リアルに嗚咽した編集者が語る「観た後も大傑作」
最後に、「ここまで語ってきた内容は実際に観るとどうだったのか?」を検証していこう。映画.com編集部が鑑賞してきたので、その感想を“ネタバレなし”でお伝えする。
結論から言うと、今作は全映画ファン、全マーベルファンに絶対に映画館で体感してほしい「観る前から傑作、観た後は大傑作」だった――! もっといえば、前作「ブラックパンサー」を鑑賞していない人でも、問題なく楽しめる内容に仕上がっていると強く感じた。
①:本編上映前…超期待作ゆえ、独特の緊張感がみなぎる
試写室に足を踏み入れると、なんとも言えない緊張感がただよっていた。これから超期待作を観るんだという、期待と不安が入り混じったような独特の空気……。僕は「アベンジャーズ エンドゲーム」公開初週の映画館や、「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」のマスコミ試写室を思い出していた。
場内が暗転。2時間41分の映画体験が始まった。
②:本編開始直後…開始5秒で号泣、マーベルロゴに注目!
驚きの幕開けだった。もうのっけからネタバレになるため、具体的なことはなにも語れないなこれ……。
あえて言及するならば、開始5秒で涙があふれ出した。比喩でもなんでもなく、本当に5秒で。やがて風の音のなかにマーベルロゴが浮かび上がるが、いつもとは異なるマッシュアップに、これも涙なくしては観られなかった。
ティ・チャラと演じるチャドウィック・ボーズマンの不在が、逆にその存在を際立たせる。全編通じて嗚咽に近いくらい泣いてしまった……。
③:作品世界の状況と物語の整理
より詳細なレビューの前に、作品世界の状況を整理しておこう。以下の事柄を頭に入れていただけると、鑑賞の際に“物語のさらに深いところまで”潜っていけると思う。
まずワカンダの人々は、稀代の国王ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)を失った悲しみゆえ、みんながみんな歯車が狂っている。ティ・チャラの妹である天才科学者・シュリ(レティーシャ・ライト)は、兄の死を忘れるために忙しなく動き回り、新たな兵器の開発に余念がない。伝統や真善美の価値観は二の次で、「燃やしたいのは世界だ」とさえ言い放ち、国を守る強力な武器を作ることに躍起になっている。
そして母であり、現国家元首である女王(アンジェラ・バセット)は、国際社会で牙を剥く。物語開始時点で、ワカンダは国際的な協力を半ば放棄していることが明かされる。地球上で最も進んだテクノロジーを独占する危険な国だとみなされ、国連の議場で強く非難されているのだ。一方で国連加盟国にもかかわらず、秘密裏にワカンダの研究施設を襲い、テクノロジーを盗もうとする輩もあとを絶たない。各国の首脳を相手に、女王が「王がいないのをいいことに……ワカンダから奪うな!」と面罵する様子からは、のっぴきならない孤立と対立が伝わってくる。
悲しみは、やがて二次感情である怒りへと変化していく。喪失の痛手が深ければ深いほど、生じる憤りもまた強いのだ。女王もシュリも国民も、口では「前に進む必要がある」と言うが、かつて掲げた平和への希求は、いつしか力への渇望となっていた。
ティ・チャラという民を強烈に束ねるカリスマも、不屈の闘志で国を守るブラックパンサーもいない。そんなワカンダに、強大な海底帝国“タロカン”の王・ネイモア(テノッチ・ウエルタ)が襲来する……。
また今作「ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー」は、実はほかのマーベル作品を観ていないと全くわからないシーンがほとんどない。キャラクターも物語もそうだ。なので、「マーベル作品は初めてです」という人も、問題なく楽しめると言える。安心して観に行ってほしい!
④:キャラクターの活躍…ブラックパンサー登場は「叫びたい衝動に」
さて、今回登場するキャラクターで、特筆すべきは3人。新たなブラックパンサーと、ネイモアと、そして単独ドラマの製作が決定している“アイアンハート”ことリリ・ウィリアムズだ。
特に新たなブラックパンサーが登場(誰なのかは本編を観てのお楽しみだ)するシーンなど、思い切り叫びたい衝動に駆られた。しなやかでシャープ、躍動感たっぷりのハイスピード&トリッキーアクションは、鮮烈なインパクトで観客に迫る。
今作の最大の敵であるネイモアもまた、強烈な個性を持つキャラクターだった。足首の羽で“空を泳ぐ”能力に、信じられないほどの怪力が掛け合わさり、まさに鬼神のごとき強さを見せつける。最高速度で航行するヘリコプターの尾翼をつかみ、そのままジャイアントスイングで海に落とすというデタラメっぷり!
ネイモアはあのソーに匹敵するパワーともいわれており、劇中のセリフを借りれば「空を飛び、ハルク並に強い」。アベンジャーズの面々ばりの最強の敵に、ティ・チャラを失ったワカンダの人々がいかに立ち向かうのか?がアクションの焦点となる。
もう1人、アイアンハートについて。鋼のスーツで空中を縦横無尽に飛び回り、AIのブリオの支援を受けながら、敵を次々になぎ倒していく。“アイアンマンの後継”とされていることも頷ける、鮮烈なデビューを果たしている。ちなみに彼女の発言の端々に“気になる要素”があるので、よく注目しておくと後の作品で良いことがあるかもしれない。
⑤:最も期待していたアクション…やっぱり半端じゃない没入感と高揚感!
鑑賞前に期待していた要素のひとつはやはり“アクション”だったが、期待に違わぬ興奮を与えてくれた。
今作のハイライトは、ワカンダと、ネイモア率いるタロカンの軍勢がぶつかり合い、陸・海・空で目まぐるしく展開するバトル。熱気がみなぎる艦隊上の白兵戦にクローズアップしたかと思いきや、視点は疾走感バツグンの空中戦に移行し、アイアンハートが機動力と火力をフル活用して空を制圧していくのだ。
続けざまに海中ではタロカンの軍勢がシャチやクジラをともなって押し寄せ、爆炎が立ち上る砂浜ではブラックパンサーとネイモアが壮絶な死闘を繰り広げる。画面がシャッフルされるみたいにスイッチされ、代わる代わる陸・海・空のアクションが映し出されていく。
ライアン・クーグラーのスタイリッシュかつダイナミックな演出と、今作では“水”をイメージさせる音楽がこれ以上ないくらいのクールな融合をみせる! 半端じゃない没入感と高揚感に浸りながら、「これIMAXや4Dだったら、どうなってしまうんだ……?」と。
⑥:大きくうねるドラマ…想いを受け継ぐ“大傑作”
キャラクターの心に積み重なっていく“感情”を、丁寧に、丁寧に描出する。マーベル作品のなかでもトップクラスに重厚なドラマが映し出されることも、今作の大きな特徴だと感じた。
重要なことは、ワカンダとタロカンは“本質的には同じ存在”だと描かれている点だ。
かつてのワカンダは、世界中に対し自分たちの本来の姿(高度なテクノロジーを保有した先進国家)をひた隠し、貧しい農業国家のフリをしていた。タロカンは海底で超高度な文明を築きながら、これまで世界に存在を知られることなく過ごしてきた。そして両国は、地上世界に対し憎しみに近い怒りを抱えている点でも共通する。
ゆえに(やっかいなことに)、ワカンダとタロカンは、敵対しながらも根底ではシンパシーを感じる……。ここにさらなるドラマが生じるのである。
怒りに狂うふたつの巨大軍事国家の存在は、ことさら重要なテーマを表現する。それは「怒りはなにも生まない」というクリシェではなく、この理不尽に満ちた世界において、悲しみと怒りをコントロールすることはとても難しい、ということだ。
たとえ世界を救ったヒーローであろうと、取り込まれれば人が変わってしまう。では現実の私たちは、どうすれば悲しみに打ち勝てるのか? 今作の登場人物の決断を通じて、ライアン・クーグラー監督は観客に問いかける。
ティ・チャラとボーズマンの存在を埋めることは未だできていないし、おそらく、今後も完全に埋まることはないだろう。しかし今作は、ワカンダの人々が喪失から立ち上がる姿を描いている。そしてそれは、チャドウィック・ボーズマンの死を悼む現実の私たちが、彼と新たに出会うための物語でもある。
想いを受け継ぐ“大傑作”。燃え上がる炎の向こうに、ティ・チャラとボーズマンの笑顔を見た。