「制作上の困難と物語上の困難が重なる」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0制作上の困難と物語上の困難が重なる

2022年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

主役の死というアクシデントを乗り越えて制作された本作。物語もチャドウィックの死をなぞるようにティ・チャラ国王の病死から幕を開ける。役者にはペルソナがあり、あらゆるキャスティングは役者の持つペルソナを考慮しながらされるが、ティ・チャラというキャラクターはチャドウィックのペルソナなしでは成り立たないと判断したからこそ、こういう展開しかなかったのだろう。
本作は誰が主役なのか、曖昧な状態からスタートする。複数の女性キャラクターが中心となって国王不在のワカンダを立て直そうと奮闘し、新たな脅威に対応せねばならない状況を描く。次の主役が立ち上がり成長するまでの過程をたっぷり時間を使って描いているのが良かった。主役の死というのは、簡単に代替できるものではないのだ。チャドウィックはそれぐらい大きな存在だったのだ。
圧倒的な資源とテクノロジーを持つワカンダと世界は上手くやっていけるのか、その課題は次に持ち越しとなった。この困難な課題に対して、どんな回答を示すのか。

杉本穂高