「悲しみを乗り越え各々が力強く躍動する」ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5悲しみを乗り越え各々が力強く躍動する

2022年11月12日
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この映画は悲しみと共に幕を開ける。主役を失ったシリーズは果たして機能しうるのか。かつてない制約を抱えながら、登場人物たちは「自分には何ができるだろう」と葛藤を続ける。そうやって国家の守護者ブラックパンサーが果たしてきた重責を共に担おうとする女性たちに光が当たる本作は、前作とは色彩やテンポや流れを大きく変え、もはやヒーロー物であること以上に一つの国家を主人公にした物語として勢いがある。強さがある。答えなきところから何かを掴み取ろうとする意欲に満ちている。そしてアバターかと見まごうほどの海の民がフィーチャーされるのも面白い。彼らの生態、戦い方、文化、歴史、境遇。なるほど、このシリーズが決してアフリカだけにスポットを当てたものではないのを示す巧みな展開部である。一場面でふと映し出される「鎖」が印象的だ。これはいわばあらゆる意味で解き放たれ、自らの意志で生き方を決断する物語と言えるのかもしれない。

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牛津厚信