「ホラー好きなので」ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス うちみさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラー好きなので
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』。ドクター・ストレンジという点では、うーん、ちょっと…。マルチバースという点でも、うーん、ちょっと。マッドネスという点では、ベリグッド!
ホラー好きとしてはワンダ以外語ることはない…。今作の監督サム・ライミさんはホラー映画撮ったり『スパイダーマン』1〜3撮ったりと、多彩・鬼才・天才なお方。ホラー方面では巨匠の一人、のはずです。
今作は完全にホラー寄り。ヴィランはワンダ・マキシモフ(スカーレット・ウィッチ)。でも彼女は好きこのんで敵役をやっているわけではないのです。映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や、ドラマ『ワンダヴィジョン』などでその事情がわかります。
ワンダはある理由から、強力な暗黒魔法の力に囚われ、闇堕ちしていきます。さらなる力を求め惑わされていく彼女の姿や、ヴィランにならざるをえない悲しい状況を描くことについて、ライミ監督は確実にキメてくれていました。
ワンダの狂気っぷりは、これまで死霊やら悪霊やら呪いやらを撮ってこられたライミ監督からのメッセージ。「魔女ってのはな、こう描くんだよ!こう!」みたいな、すごみ。MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)では、魔女はワンダ以外にも存在します。この先登場する魔女は皆、今作のように恐怖をばらまくキャラクターであってほしいと願ってしまいました。
今回マルチバース側のワンダも登場しますが、彼女にも危害がおよび…。それがもうふびんでかわいそうで。彼女の立場になって観ると心が痛みます。そして二人のワンダの対比も悲しい。それをもっと際立たせるための描写も、あのまがまがしいワンダなんだろうなと。ライミ監督がやってくれて大正解だと思えました。
また、闇堕ちし化け物と成ったワンダの挙動、ストレンジの起死回生の反撃方法など、随所にライミ監督らしい演出が見られてすごくよかったです。私はホラー好きだしライミ監督の他作品も好きなので心から楽しめました。ただ、MCUのストーリーとして、マルチバースの展開として、ちょっと引っかかる場面もありました。
まとめますと、ライミ監督の味がしみっしみにしみこんだMCU作品でした。同じキャラクターだけど(今回ならドクター・ストレンジ)、監督ごとに味わいが変わるっていうのは、私は好きです。おいしくいただけます。MCUは作品同士のつながりが大事っていうのもあるので、なんというか、その味の変化を壁に感じることもありましたが。
話逸れますが、こんな感想を書いていたら、映画X-MENシリーズの『ニュー・ミュータント』はライミ監督に撮ってもらいたかったな〜と思っちゃいました。
2022/5/14 新宿ピカデリー 2回目鑑賞
2022/5/5 新宿ピカデリー