「世界観さえ理解できれば絶対楽しい!」劇場版「オーバーロード」聖王国編 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
世界観さえ理解できれば絶対楽しい!
ライトノベル原作のテレビアニメ「オーバーロード」シリーズの劇場版。テレビアニメがおもしろかったので、本作も期待して待ち、公開2日目に鑑賞してきました。250人規模のスクリーンがほぼ満席で、しかも観客の性別も年齢もさまざまで、こんなにも幅広い層から支持されているのかとちょっと驚きました。
ストーリーは、長大な城壁を築きながらも、魔皇ヤルダバオト率いる亜人連合軍の侵攻に国家崩壊の危機を迎えていたローブル聖王国は、聖騎士団長レメディオスを使者として遣わし、アインズ・ウール・ゴウン魔導国へ援助を求め、魔導王自らの援助を受け、改めて亜人連合軍に対峙していくというもの。
テレビアニメは7年間で4期にわたって描かれているので、その記憶も曖昧で本作のストーリーについていけるか心配でしたが、全くの杞憂でした。本作では、ローブル聖王国と亜人連合軍の攻防を背景に、弓の得意な少女ネイアがアインズに心酔する姿にスポットを当てているだけなので、とてもわかりやすいです。アインズの素性、魔導国の成り立ち、周辺諸国とのパワーバランスなどの予備知識は不要です。
とはいえ、冒頭で流れる説明文だけでは世界観が全く理解できないと思うので、テレビアニメ第1期ぐらいは事前に視聴しておいたほうがいいでしょう。特に、アインズ配下の忠実な部下たちとその役割や特徴を知らないと、メインストーリーの裏側で進行する謀略が理解できず、本作の魅力も半減してしまうでしょう。例によって魔導王の支配と名声を広げるためのデミウルゴスの策略が冴えわたるので、できれば事後にアインズとデミウルゴスが語るシーンも用意し、探り探り発するアインズの曖昧な発言を、デミウルゴスが深読みして拾い上げるシーンも観たかったです。
今回は先行上映ということでIMAX一択でしたが、迫力の映像で没入感を味わうことができてよかったです。テレビアニメと比べて劇場版ならではのクオリティを感じたわけではありませんが、キャラの動きやアクションは滑らかでよかったように思います。
というわけで、シリーズファンなら楽しめるものの、やはり初見のかたには難しいかもしれない本作。上映終了後、後ろの席にいたカップルの女性が、彼氏に「ひどい話だよね!」と言うのが聞こえてきました。彼氏に代わって「お、おう…、で、でも、おもしろかったよね。」と心の中で返しておきました。
主演は日野聡さんで、相変わらずアインズと鈴木悟の演じ分けがお見事です。脇を固めるのは、青山吉能さん、生天目仁美さん、加藤将之さん、瀬戸麻沙美さん、早見沙織さん、戸松遥さん、原由美さんら。本作ではアルベドの活躍の場がなかったのがちょっと残念です。