「息子の名を告げて、心臓に一発」キャッシュトラック としちゃん(≧∇≦)さんの映画レビュー(感想・評価)
息子の名を告げて、心臓に一発
映画は現金輸送車が突然襲われるシーンから始まります。そこに、ジェイソン・ステイサム演じる男が新たに輸送会社に入社する流れになるんだけど、最初は「この人、ただの新人じゃないな…」という雰囲気だけがあって、どこに向かうのか分からないまま静かに物語が進んでいきます。
途中で、この男が実はマフィアのような裏社会のボス的存在で、しかも映画の冒頭で息子を殺されたことが判明。復讐のために現金輸送会社に潜り込んでいたことが分かるんですが、その展開が一気に重みを増します。
中盤からは、現金輸送車を襲った犯人グループ側の視点も描かれて、復讐する側と襲う側、両方の思惑が交錯していく構成になっていて、サスペンスとしてもすごく引き込まれました。
最も印象に残ったのはラスト。息子を撃った犯人を追い詰め、息子が撃たれたように、肝臓・肺・膵臓と順に銃弾を撃ち込んでいくシーン。最後に「因みに息子の名前ダギィー」と静かに呟き、心臓に一発撃ち込むあの瞬間は、まさに冷静で淡々とした復讐の完成。声を荒げることなく、感情を内に秘めたまま復讐を果たす姿が逆にものすごく迫力ありました。
映画全体としては、アクションがバリバリあるわけじゃなく、笑える要素もほぼない。でも、その分ずっと重苦しく静かな緊張感が続いて、最後までだれることなく観られました。
FBIの男(アンディ・ガルシア)との関係性がいまひとつ謎なまま終わったのは気になるけど、「お互い何か裏でつながってるんだろうな…」と想像させる余白もあって、それもまたリアル。
普段の“動きまくるステイサム”を期待するとちょっと違うかもしれないけど、これは“息子を奪われた父の冷静で冷徹な復讐劇”。静かで鋭いジェイソン・ステイサムを観たい人にはおすすめです。