「応答せよ、応答せよ。こちら、あみ子。応答せよ。」こちらあみ子 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
応答せよ、応答せよ。こちら、あみ子。応答せよ。
つらい。観終えてそんな感情しか湧いてこない。結局、あみ子のことが原因で家庭崩壊してしまった話。だけど、あみ子は全然そこに気付かない。気付くことさえできない。それは彼女がADHDだから。空気が読めない子だから。彼女に1ミリもの悪意がないから。だから、つらい。映画紹介とかで彼女が「純粋無垢」だとか見掛けるが、あみ子は清らかだとでも言いたいのか。わかってないなと思う。たしかに正直ではあるが、世間から見ればどこか歪んでいる。ゆえに、あみ子の「良かれ」も時には悪になる。周りから「変わった子」で見られ、散々振り回された家族にしてみれば、きれいごとの欠片などみじんもなく、苛立ちでしかない。でもね、そんな家族でさえ、本当のあみ子のことを理解してあげていないんだよな。父も継母も兄も"あみ子のせいで"としか思っていない。だから、つらい。たまに、ガサツな人間がセレブな会合に居合わせた時に生じる場違い感が、常にあみ子とその周辺に起こる。あみ子にとってはそれが普通。だけど、周りにとってはそれは奇妙。それを感じることができないあみ子にとっては、世間は不条理で成り立っているとしか思えない。だから、つらい。そしてようやく違和感を感じたあみ子が尋ねる。どこが気持ち悪いのか教えてほしい、と。たぶん、あみ子はそれを聞いてもわからないだろう。だから、つらい。つらくて仕方がない。ただ、この映画を作った人は、そのことを分かっている。そこがせめてもの救いだ。
お父さんが穏やかだったのは、優しさではなく、接し方がわからないが故の無感情だったのですね。継母なら、なおさらなのでしょう。継母にとってもあみ子にとっても不幸。結局、誰も理解者がいないあみ子が、一番つらいんでしょうね。
同感です。特にお母さんが可哀想過ぎる。お父さんはもっと娘と向き合うと状況は変わったかも知れないが、明らかに重度の発達障害で、接し方が分からなかったのかも。
何よりアイツだから仕方ないという、周囲の無関心さが嫌だった。でも、俺だけの秘密って言ってくれた彼の言葉が救い。