劇場公開日 2021年7月30日

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「アクションをただ見せるのがアクション映画に非ず。」ベイビーわるきゅーれ レントさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5アクションをただ見せるのがアクション映画に非ず。

2023年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

単純

寝られる

以前から評判の作品で、つい先日も映画評論家の町山氏がベタ褒めしてたので無料配信にてやっと鑑賞。しかし、正直自分には合わなかった。

まず主役のちさととまひろを全く好きになれない。ちさとは時には声がでかくなったり、話し方がやたらと神経に触るし、そもそも猫が歩く音のまねってなに?あの演出が受けるとでも思ったのか。監督の感性に全くついていけない。また逆にまひろはコミュ障設定なのはわかるが終始ぼそぼそ声で何を言ってるのか聞き取りづらいし。悪役の組長の娘も終始空回りなキャラクターで寒いし、うざいだけ。

いまどき女子を見せてるつもりなのか、だるそうに殺しをやるまひろ。終わった後もあ~しんど、みたいにぼやく。いや、本業の殺しくらいちゃんとやろうよ。等々、他の人がいいところと言っていたところがことごとく自分にははまらない。開始十分でこれは自分には合わない映画だと悟った。
唯一、組長を演じた本宮は良かった。あの団小屋を脅すシーンは「ノーカントリー」オマージュだろう。あのワンシーンのみで一般人とは違う危険さを表現できるからね。
他にも死体処理業者がクドクドちさとに苦情を言うシーンも可笑しかったし、メイド喫茶のくだりも笑えた。ところどころに笑えるシーンは確かにあった。

ただ、やはり肝心の主役二人のキャラクターを好きになれなかったのが致命的だった。

また、なにかとアクションが話題の本作だが、韓国映画の「アジョシ」や「ベルリンファイル」、インドネシア映画の「レイド」シリーズ等々(全て十年以上前の作品)、アクション映画には目がないぶん目も肥えてるので、評価は厳しめにならざるを得ない。
これらの作品と比べるのはさすがに可哀想だが、それを抜きにしても本作はアクション映画としてもけして満足のいく作品ではなかった。

日本映画にしてはクライマックスのアクションはさすが主演の女の子がスタントマンだけによく動けていたとは思う。ただ、アクションを見せるだけがアクション映画ではなく作品の中でどうアクションを見せるのかが重要だと思う。

クライマックスに一番ド派手なアクションを持ってくるのは確かに定番だけど、そこへ行くまでの脈絡というか、盛り上げ方が大事でしょ。
そもそもラストで2人が組に乗り込む必然性あったのか。ただ組長の娘に挑発されて行っただけだよね。アクションを見せたいからって話が無理くりなんだな。

本作は今どきの女子が殺し屋だったら面白いかもという発想で作られたんだろう。いわゆるギャップ萌えというやつか。
確かに設定はシティハンターみたいなコミックのノリで作られてるからリアリティーは皆無。けど中途半端に二人のキャラクターを描こうとはしている。社会不適応者で不器用なまひろと切れやすいが要領のいいちさと。でも二人の人となりは最後までわからない。どういう子たちなのか全くつかみどころがない。この監督は人間を描く力はないと思う。

序盤のおかしなコンビニ(やくざがしのぎで経営してるのか?)のシーンがあったけど、下手に二人のキャラクターを描こうとせずに全編あのノリでやってくれればシュールな作品として楽しめた気がする。

あと、日本人がサイドグリップで銃を撃つのは噓くさくなるからやらないほうがいいのよなあ。あれ、やたらとやりたがるんだよなあ。ハリウッド映画でマフィアとかがやるから絵になるんだけどねえ。ギャング撃ちというだけあって。
まひろがクライマックスで手練れと戦い苦戦するところ、あれも伏線として手練れがどれだけ強いか事前に観客に見せとくもんだよなあ。そういう伏線が効いてこそ盛り上がるんだよね。これもアクション映画のセオリー。
等々、かなり粗ばかりが目についてしまった作品。本作の評判を知らずにフラットな気持ちで深夜テレビ放送なんかで見たりしたら楽しめたかも。

ミニシアターで口コミで評判が上がりシネコンで上映してがっかりした「カメラを止めるな」を思い出した。
ちなみに二作目は見る間もなくすぐ公開が終わってしまった。

レント