劇場公開日 2021年7月30日

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「期待したほどでは無かったけど、監督の将来性は感じますね」ベイビーわるきゅーれ 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0期待したほどでは無かったけど、監督の将来性は感じますね

2022年1月12日
PCから投稿

かっこいい女性アクション×日常生活の緩い描写で、独自性があったのは良かったです
が、期待したほどでは無かったなと
ロングランになってるからどんだけ面白いのかと思いましたが、シネマロサでしかやってなくて拡大上映した他の劇場はとっくに終わってるから、シネマロサと配給会社の関係性でなんか有るんでしょうね
インディーズ映画だと思えば発見
メジャー映画だと思えばよくて平均点ですね
とはいえ、監督さんのセンスや将来性は感じました
これを上回る作品はいずれ撮れると思います

欠点を言えば、日常生活の緩い描写がダラダラ会話劇で全部冗長ということでしょうか
メイドカフェ、エージェントとの喫茶店、家……ほとんどに不要で無駄な会話があります
死体処理業者と黒髪ロン毛の会話なんてほぼ不要ですからね
きっと監督はこの会話を面白いと思ってるのでしょうが、それが寒いですね
「クセがすごい」
「今時言う人いるんだ」
例えばこういう会話がただの引用より一歩先にいってると思って書いてるんだと思うんですけど、古くなった流行語を今さらいじってる時点でそもそもダサいんですよ
映画なんて撮影から公開まで時間が1年2年掛かるんだから、よりダサくより古くなります
これらの無駄なセリフを日常生活的なリアリティと感じる人もいると思うんですが、無くても話は前に進むから、そのほうが同じ95分でももっと面白い展開を増やせるから、こういうセリフを書かないほうがいいと思います
無駄なセリフは一切無い、それが映画的なリアリティです
撮影後に気付いたら、編集でバッサリ切れるようになればさらに前進できると思います
如何せん、脚本や編集をやりたがる監督に限って、無駄なセリフを書きたがるし、無駄なシーンや画を入れたがるものなんですけどね
ついでに言うと、途中で『3週間前』に戻る構成でしたけど、それも必要無いですよね
時間を逆戻ししたことで理解出来るようになる謎も無かったし、普通に時系列順に並べる編集で構成したほうが良かったと思います
その辺も監督自ら編集するのは止めたほうがいいと思った理由ですね
自分が書いた脚本を自分で演出して自分で編集していると、自分で自分の欠点を客観視できないんですよね
ミスがそのまま全部見過ごされていますよね

あと、金髪少女が日常生活で他人となじめない、うまくなじめる黒髪ロン毛とケンカになる、そして仲直りする、という、この作品で唯一ドラマとカタルシスがあるパートの描き方が雑過ぎです
金髪少女が何故急に自分から謝れたのか、そのキッカケが、変化点が描かれていないし、だから、見終わっても何の感動も得られません
仲直りするのもクライマックス前の日常パートじゃなくて、クライマックスにひとりでアジトに乗り込んで死にそうになってる黒髪ロン毛を、金髪少女が遅れて助けに行くことで、それで仲直りするほうが絶対面白いのに、そのへんの構成も下手だから勿体ないです
日常パートのクライマックス、アクションのクライマックスと、小さい山が2つになっているのは大きい山を1つだけにしないと
もっと面白くなる余地に気付かないと
ついでに言うと、黒髪ロン毛が最初にヤクザ女に殺されなくて生きたままアパートに放置されたのも謎でした
殺すわけにはいかないんでしょうけど、ご都合で主人公の片割れを生かしちゃ興醒めです
それとヤクザのボスも雑に殺しましたけど、あれで笑いにはなるけど物語全体の緊張感が無くなるんですよね
主人公たちを狙うヤクザたちがボスですらあんなに弱いなら、絶対に主人公たちが負けるわけ無いと思うんですよ
そんな、確実に主人公側が勝ちそうな物語を観客が面白いと思うのか?
1人だけ強かったヤクザも、金髪少女も苦戦していたのに、ダラッと勝ちましたけど、あれも気持ち悪い描き方でしたね
金髪少女が機転を利かせて罠を張っていたとか、新たな武器を手にしたとか、そういう知的なアイデアで腕力の差を逆転した、とかそういう展開が普通はあるものですけど、それが無くて気付いたら何故か形勢逆転しているという……
その辺、監督はもうちょっと考えた方がいいですね
自分が好きだからアクション映画を作る、だけではそろそろ行き詰まります

そんな感じでしょうか
まぁ、結構良くできててセンスも感じるのに、脚本の構成やセリフや編集などでダメなポイントも散見されてるから、逆にそれが直れば伸びしろですね
それが将来性を感じた根拠です
あと、インディーズでアクション撮れる監督って競合が少なくて需要があるでしょうしね

東鳩