「幽(かそ)けき存在の愛おしさ」かそけきサンカヨウ グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
幽(かそ)けき存在の愛おしさ
サンカヨウがどんな花なのか。
映画を見る前に、是非Google先生で確認しておいてください。写真もたくさん載ってます。
映画は原作よりも、陽、陸、沙樹の三人の感性がキュッと詰まって描かれます。また、原作では新しい母である美子さんの少し不器用だけどその分、お釣りがくるほどの包容力と優しさがさり気なく描かれていましたが、映画ではそれほど強調されていません。
父、母との関係性は大人の働きかけよりも陽本人の心の移ろいを通して描かれ、高校一年生の陽、陸、沙樹の個々の心への寄り添いを重視して描いているように感じました。
今泉監督の独特の間はこの映画でも健在で、鑑賞者の想像力を微妙に刺激してきます。明瞭さを求めてしまう方にとってはもしかしたら退屈さに感じてしまう演出なのかもしれませんが、陽、陸、沙樹それぞれの内面を想像するだけで、とても愛おしくて、暖かく抱きしめたくなります。
サンカヨウを見て思い浮かべるさまざまなイメージ。
淡さや透明感やその出現頻度や儚さ…
人それぞれが思い浮かべるイメージと陽や陸や沙樹が抱えるものはどこかで重なるけれど、絶えず移ろってもいる。
強い絆で描かれる家族もいいけれど、サンカヨウに象徴されるかそけき(幽けき)関係性のほうが、〝居場所〟としては心地良いこともあるのだと思います。
陽と沙樹の、現実を受け止める力と覚悟と決意。
陸のアイデンティティ模索の葛藤。
うん⁈ なんだか、この男女の精神性の違いは、大人になってもあまり変わらないような気がしますね。
基本、男は甘ったれなのでしょうか。
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