「許されざる幸せ」成れの果て 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
許されざる幸せ
姉の結婚、小夜は素直に喜べなかった。
何故なら相手は絶対に許せないあの男だったから。
小夜は久しぶりに帰郷し、忌まわしき過去と対峙する。
なんとも言えない映画だった。
小夜の過去に何があったのか?
事件については鑑賞以前から容易に想像出来るが、それだけで終わらないのがこの映画。
田舎の小さなコミュニティの中で“なんとなく”封じられてきた事件を、地元から追い出され幸せを奪われた小夜が、決して“なんとなく”では終わらせないと、関係者たちに思い出させ毒を流し込む。
前半は小夜の強い女性像に惹かれた。
彼女の強い憤りの籠った言葉の一つ一つには、論破や逆張りをしているかのような圧と絶対に揺るがないカッコ良さがあった。
ただし彼女の悲痛を美化してはいけない。
後半ではある程度張っていた予防線を壊し、復讐へと転じてしまう。やはり復讐は何も生まない。自分の復讐によって自分が傷つけられてしまう。
こういった場合の復讐的正義は罷り通るべきだと思うのだけど、なんとも切ない。
登場人物が本当に全員狂っている。
怒り、悲しみ、悪意、自衛。
終始ドロドロで重いテーマにも関わらず、そこまで引きずる重さではなかったが、やはり小夜の受けたことを考えると苦しく辛い。
それに対して、自分のことばかり考えて小夜を上手く利用するクズどもには、腹が立って仕方がない。
ただ、それだけ魅力的な演技だったということ。
作中では大嫌いだけど、役者はみんな良かった。
中でも萩原みのりさんは群を抜いて上手い。
流石、良い女優さんですわ。
また、カメラワークがなかなか凝っていて好きだった。
全く詳しくないので詳しいことはよく分からないが、やり過ぎとも言える構図や撮影方法は見ていてワクワクした。
また、化粧の扱い方も上手い。エイゴによる化粧を引き立たせるために、その前のシーンの化粧を落としてあるのには感心した。
清純そうな見た目でも〇〇○犯である。ふとした瞬間に化粧が剥がれ、本性が見える。
前半だけならば今年ベスト級だったが、ラストの展開の雑さが少し惜しい。
理解力が乏しいからかもしれないが、夫の出張〜まーくんの狂気〜姉の崩壊の流れが自分にはさっぱり。
結局小夜はどうなったの?あれは、どういう時系列での出来事なの?
妹主体としてやってきたことが、あそこで急に変わってしまったような気がした。
かなり非現実的ではあれど、このテーマはかなり現実的。どうか、この映画が“フィクション”であって欲しい。
そして、萩原さんには作品の中でも現実でも、是非幸せになって欲しい。