「もっと音楽を!」サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時) osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと音楽を!
クエストラブが編集している時点で嫌な予感はしていたが、音楽以外に色々詰め込みすぎ。
当時の政治的背景を抜きに、このフェスは語れないというのは、勿論わからんでもないが、イチイチ演奏中にコメントをインサートするのは全くよろしくない。
素材のライブ演奏が、どれもこれも本当に素晴らしかったので「クエストラブのアホめ!」と何度も呟いてしまった。ホントわかってねえ野郎だ。
ハービー・マン&ロイ・エアーズは殆どBGM扱いだし、ソニー・シャーロックも僅かなパートのみで本当にガックシ。
これがヒップホップ特有のミクスチュア感覚だと言うなら勘違い甚だしいとしか言いようがない。
ちなみに、この埋もれていた映像を発掘したのはクエストラブではない。
NYの Historic Films Archive の職員が、当時のライブを全編に渡り録画していたTVプロデューサーのHal Tulchin氏の居場所を突き止め、そこの地下室で何十年も丁重に保管されていた40時間にも及ぶビデオテープ(Scotch!)と巡り合ったらしい。
むしろ、このお宝発掘的なエピソードの方が、当時の観客の思い出話なんかよりもグイグイと引き込むストーリー要素があったと思う。こういう所も「わかってねえなあ〜」といった感じ。
一方、キング牧師の暗殺の瞬間の件や、New York Times のNegro→Blackの件など(Negro is dead. Black is born!)当時の諸々のエピソードは、それら単体でも記録映像としては貴重だった訳で、
ライブ演奏とキッチリ分けて編集して、タイトルにも引用したギル・スコット・ヘロンの名曲をインタビューのBGMとして流して、政治的なドキュメンタリーとしてメリハリもつければ、もっと演奏の方もじっくり堪能できたはず。
スライも、このフェスならではの政治的なメッセージでもあるかとチョット期待したが、結局そんな事も特になく。あのウッドストックの熱狂にも遠く及ばず(アレに比べるのも酷かもしれんが)。
ニーナ・シモンの過激なアジテーションにはチョットびっくりしたが、あれほどストレートな言葉だと、当局から危険視されたのも無理もない。あの頃の黒人の状況だとアレくらい言いたくもなるのも無理ないが。それにしても彼女の音楽はフルで聴きたかった。
マックス・ローチ&アビー・リンカーンなんか、間違いなくニーナ以上に過激にアジってたと思うが、ここも残念なことに勿体なく編集されてしまい…… もっとフルで見せろ!フルで!!
あと、実際の開催日が1969年6月29日から8月24日で、毎回日曜日の午後3時スタートだったのだから、演奏した日付はキャプションに入れないと!基本や!基本!
みんな演奏のパフォーマンスは、本当に素晴らしかったので、出来れば全体の尺もう30分、いや1時間!は伸ばして、とにかく、もっともっと音楽を聴かせて欲しかった。
是非、ウッドストックみたいにno-editのコンプリート版の方をHuluか何処かで配信して欲しい。