「可笑しくってすごく切ない」恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
可笑しくってすごく切ない
潔癖症のボーチンとジン。ふたりはその潔癖症故に出会い、お互いを理解し合い、恋に落ちた。
前半はボーチンの視線で、まさに潔癖症あるあるな日常がコメディタッチで描かれるのだけど、ある日突然ボーチンの潔癖症が治ってしまい、ふたりの間にずれが生じていく。ここからジンに視点が変わるのだが、なんともまあ切ない展開に涙させられる。
観終わって考えた。果たして正常ってなんなのだろう。
わたしは潔癖症というほどではないものの、病的に執着が強く、自己診断ではあるものの強迫性障害だったのだろうと思われることがあった。今ではもうすっかり鳴りを潜めており、我ながらあれは何だったのだろうと不思議に思うくらいではあるものの、そんな経験から彼らの潔癖症についてもある程度理解はできる。
けれども、じゃあその頃の自分が異常だったかといわれると、そんなことはないと思うのだ。もちろん、潔癖症のふたりと違い、わたしは診断を受けて病名がついたわけではない。でも病気と判断されたら異常なのだろうか。人と異なるところがあったら異常なの? でも人間誰しも苦手なものがあったりこだわりがあったりするものじゃないのかな? それが強くなって、普通の生活が送れず、病院で診断を受けて病名がついたら「異常」なのだろうか。その「正常」と「異常」の間はグラデーションであって、どこからが正常でどこまで葉異常なのかなんてデジタルに決められるものでもないと思うのだ。
確かに映画のふたりはちゃんとした生活が送れないくらいではあったので、異常と言われてしまっても仕方がないかもしれない。ただ、それでふたりの間に亀裂が生じてしまうのはとても切ない。
コメディを観に来たつもりで気軽に構えていたせいで、余計に考え込んでしまった。これから見る方は要注意ですよ。