「描かれたのは潔癖症の恋愛の難しさではなく、恋愛フィルタの効果とはかなさ」恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
描かれたのは潔癖症の恋愛の難しさではなく、恋愛フィルタの効果とはかなさ
恋愛って共通項の探り合いから始まると思う。趣味、出身地、部活、食事の好み、趣向とか…。人によって重視されるポイントが異なるが、重要ポイントの共通項があると一気に親近感が湧く。ラブストーリーはその共通項をどこに置いて、どのように確認しあうかが脚本の妙になる。
本作に出てくる2人は重度の潔癖症という共通項を確認しあうところから恋愛が始まる。普通ではないと自覚していてわかってもらえないと諦めているところに、自分のことを理解してくれる異性が現れる。たしかにこれは恋愛に発展しやすい(現実では共通項があっても恋愛に発展しないことがたくさんあるのだが…)。
しかも、付き合いはじめたら、潔癖症という共通項は結束を強める要素にもなる。ただ、物語としてはこのままでは済まない。その後の2人のすれ違いは普通の男女の恋愛と似ている。さらに、ラストは意外な展開が待っていて結構驚いてしまった。彼女の行動、決断は、優しさなのか、強迫性障害がもたらしたものなのか。
極端な形で見せてはいたが、わかりあえていると思っていたものが突如崩れてしまうという、恋愛のフィルタが演出するもの、そしてそのフィルタ効果のはかなさが表現されていた。考えさせられてしまった。気楽な気持ちで観たはずなのに、なかなか奥が深い映画だった。
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