「知らないことが多く、印象に残った。こういう歴史的事件の掘り起こしは重要と感じさせた。」MINAMATA ミナマタ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
知らないことが多く、印象に残った。こういう歴史的事件の掘り起こしは重要と感じさせた。
アンドリュー・レビタス 監督による2020年製作(115分/G)のアメリカ映画。
原題:Minamata、配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム、劇場公開日:2021年9月23日。
水俣病を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスのドキュメンタリー的な映画。
真正面から、水俣病を引き起こしたチッソ(株)及びその社長を責任者として取り挙げていて、かなり驚かされた。ジョニー・デップの様なスターが、この様な映画の制作に関与することに敬意も覚えた。
ユージン・スミス(ジョニー・デップ)が、チッソ社長から多額のお金で取材中止を要請される描写が生々しい。日本人ジャーナリストの何人かがこの種のお金を受け取ったことを想像してしまった。社長が話したppm論議、ほんの僅かな異物混入で起きてることで、生産物による有益性はとても多くの人間が得ているが、それに比べて疾病という不利益が生じているのは僅か、に権力者の言う「公共の利益」の怖さを覚えた。
ユージンの仕事場の家に放火されたことに怒りを覚えたが、これは事実ではない様。但し、自主交渉闘争派の家に火をつけられたことはあった模様。一方、彼が入院を要する怪我を負わされたのは事実で、会社の御用組合員による犯行だった様。世界の眼も意識せず、視野狭窄的に経営者の意向に沿ってかこういうことをしてしまう日本の会社員、悲しい。でも、こういう体質は会社組合にはあったなあが、実感。
沖縄戦従軍記者として銃弾を浴び、ウイスキー(サントリー レッド)を片時も離せないユージン・スミスをジョニー・デップは好演。安くて学生時代にはよく飲んだ(社会人になってからは不味さが分かり、口にできなかった)「レッド」というのに、共感を覚えた。今まで見た中で、彼の最高の演技である気がした。真田広之も良かった。川本 輝夫(1931年〜 1999年、水俣病の患者の運動体『チッソ水俣病患者連盟』委員長)がモデルらしい。英会話が達者なのには少し違和感を感じたが。
アイリーン・美緒子・スミスを演じた美波も、とても魅力的であった。知らない女優さんと思っていたが、2000年『バトル・ロワイアル』で川田章吾(山本太郎)の恋人役とのことで、あの娘と思い出した。
水俣だけでなく、同様の環境破壊問題が世界中で起きていることの紹介もあって、視野の大きさに感心。そして最後、水俣病の認定に関して、日本政府の酷い対応も糾弾されていた。既に終わってしまった問題では無く、今もなお進行中の問題で有るとの紹介が、胸を打った。福島原発事故対応等も含めて、何故、日本政府は庶民の信頼を無くすようなことを一生懸命に行うのだろうか?
監督アンドリュー・レビタス、製作サム・サルカル 、ビル・ジョンソン 、ガブリエル・タナ ケバン・バン・トンプソン 、デビッド・ケスラー 、ザック・エイバリー 、アンドリュー・レビタス 、ジョニー・デップ、製作総指揮ジェイソン・フォーマン 、ピーター・タッチ 、スティーブン・スペンス、 ピーター・ワトソン 、マリー=ガブリエル・スチュワート 、フィル・ハント 、コンプトン・ロス 、ノーマン・メリー 、ピーター・ハンプデン 、ノブ・ハセガワ ジョー・ハセガワ。脚本デビッド・ケスラー 、スティーブン・ドイターズ 、アンドリュー・レビタス 、ジェイソン・フォーマン。撮影ブノワ・ドゥローム、美術トム・フォーデン、衣装モミルカ・バイロビッチ、編集ネイサン・ヌーゲント、音楽坂本龍一、音楽監修
バド・カー。
出演
W・ユージン・スミスユージン・スミスジョニー・デップ、ヤマザキ・ミツオ真田広之、ノジマ・ジュンイチ國村隼、アイリーン美波、キヨシ加瀬亮、マツムラ・タツオ浅野忠信、マツムラ・マサコ岩瀬晶子、ミリーキャサリン・ジェンキンス、ロバート・“ボブ”・ヘイズビル・ナイ、シゲル青木柚。