「愚行と強欲の証明」MINAMATA ミナマタ U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
愚行と強欲の証明
胸が苦しい。
海外でも「ミナマタ」って病名なんだな。
「水俣病」という公害の話だけれど、何も水俣に限った話ではなかった。日本の各地、世界の各地で今尚続く、科学の発展によってもたらされた公害に苦しむ人々の話で、更にはソレを世界に拡散するジャーナリズムの話だった。
チッソの社長は言う「微量です。微量過ぎて感知できない程のものです。」地球の全人口と比べればそうなのだろう。とある島国の更に小さな村落の話だ。
でも…アレはないだろう。
無視していいと思えないし、必要な代償だとも思えない。劇中、裁判を戦うリーダーの言葉が胸を抉る。
「あんたら人間ですか?」
「同じ人間にこうも差があっていいんですか?」
水俣病に罹患して出生した子供達…彼や彼女達を無視できるなら、人間ではないと思う。
例えば、ソレが無かったらスマホは使えませんよ、と言われればそれもいいだろ。電話も電車もパソコンも維持できないですよと言われても、呑むよ。
TVも見れませんし、映画も見れないですよ?あぁ、いいとも!今後、あぁいう子達が産まれて来ない世界になるなら、喜んで手放すよ!
ツケは必ず払わされる。
そのツケを払うのは僕らの子孫だ。
地球温暖化もその一つではあるかもしれない。
便利な世の中になるのは嬉しいが、誰も困らない形で発展していく術はないのだろうか?
無い、のだろうな…今は。
あんな事を繰り返していれば、破滅に向かうしかなかろうが…。
映画としては、正直しんどい。
恋愛もなければアクションもない。ドンパチもしないし、ラブシーンもない。
なのだが…あの最後の写真。
アレにフォーカスさせる為の作為であるなら見事な編集なのだ。ギリギリのラインに思う。
水俣の事例を引用しすぎれば、最後が霞むし、足りなければ響かない。刺さらない。
あの写真を見たLIFEの編集長の表情が全てに思う。
アレがジャーナリストの仕事なのだろう。
あの写真を見て、あの編集長と同じ感情を抱いた人を何億人と生む事が写真の持つ力なのだろう。
人の様々な側面が凝縮された1枚だった。
切り取られた「今」
まやかしではない「現在」を突きつけられる。
今尚、継続中である水俣病の事を知れて良かった。政府が解決したと言うのなら、その根拠を聞いてみたい。
なくてはならない作品だと思う。
真田さんの台詞の一つ一つが重い。
この作品における水俣病の大部分を一手に引き受けていたようだった。
音楽が坂本龍一さんだったのだなぁ…あのエンドロールのピアノもそうなのだろうか?