劇場公開日 2021年9月23日

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「お金では取り戻せないのに、お金を求めることしかできない戦いを記録してくれた人」MINAMATA ミナマタ kumiko21さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5お金では取り戻せないのに、お金を求めることしかできない戦いを記録してくれた人

2021年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「わかった・知ってる」気になった瞬間、人は興味を失ってしまう生き物なのだろう。日本の高度経済成長期、重化学工業化重視が巻き起こした環境破壊・いわゆる四大公害事件(水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく)などもその典型なのではないか。社会科の時間になぞり、今では日本の河川は良質な水質を取り戻し、各国の模範になっているくらいの認識すらあった、自分。
その点、知らなかったであろうことを使命感に燃え?ストレートに映像化したジョニー・デップには感謝しかない。役作りもよかったと思う。コピー出来ていた。
実は鑑賞前にノンフィション作家・石井妙子氏の著書『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』(文藝春秋)を読んでしまっていたので、事実関係としての新鮮なエピソードは何らなかった。むしろ当たり前だけどコンパクトに映像化するにあたってうまく脚本まとめたな、ユージン・スミスがああなってしまったバックボーンがちょっと描き足りてないなと思いながら鑑賞した。
若い人にたくさん見てもらえるといいと思う。1964年の東京オリンピック、高度成長期、1970年の大阪万博、日本列島改造計画の時代、、、決して今に比べても素晴らしい国ではなかった。常に「光と陰」、「中央と地方」、「エリート層と貧困層」の二重構造を抱え続けて今に至る国なのだ。
ユージン・スミスはいくつかの場面で、その場を納めてくれとばかりに差し出された「お金・小切手の類」を決して受け取らなかった。そこが最高にかっこよかった。(受け取ってしまった人たちは多くいたことだろう)

Kumiko21
NOBUさんのコメント
2021年9月30日

今晩は。
 初めましてでしょうか・・。
 今作のユージン・スミスと、ジョニー・デップは、どこか相通じるものがあるなあと思いながら本作を鑑賞しました。
 当時、世界的に報道記者として名声がありつつも、数々のトラブルで干されていたユージンと、類稀なるハリウッドでの成功を収めつつDVの真偽は別にして、自身の閉塞感からかやや自暴自棄になっているジョニー・デップの姿が、被って見えてしまいました。
 私が今作でのジョニー・デップが素晴しいと思ったのは、そのような境遇の中、エンタメ性の薄い今作を”製作”し、主演したと言う事実です。
 パンフレットの冒頭の彼の言葉は、映画人としての使命を記したモノであり、彼の二面性を理解した上でも、素晴らしいと思いました。では。

NOBU