「全体主義の黄昏れ」DAU. 退行 shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
全体主義の黄昏れ
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独裁大国にとって人権など存在しない。命のあまりにも軽い扱いに気が滅入る。個人が全体に取り込まれると最悪の怪物となる。最終的には一番手っ取り早く、素早い解決策である暴力で終わらせてしまうやり方は時代を問わず何時でも根底にある。全体主義の核は恐怖であることを、この監督は映像と時間を上手く使って見事に描いている。その上で、エンディングにおけるナレーションがいつまでも頭に残る仕掛けとなっている「地獄は魂が浄化されるところである」。
尺の長さなど気にならないほど良く練られたシナリオと手持ちカメラによる画面の落ち着きなさによる効果が見事にはまった濃厚な作りで、少しの綻びが大崩壊となる過程を丹念に描くにはこれだけの尺が必要だと妙に納得がいった。監督の狂気が素晴らしい作品を生み、その時間を共有した喜びの余韻はしばらく残りそうだ。しかし、心胆を寒からしめる内容であることには違いがない。
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マサシさんのコメント
2021年9月7日
超人と呼ばれる所謂シンクタンクの様な集団は全体主義じゃなくともあるし、この集団に人権が無いと言うよりは、自分勝手に悪ふざけを周りに振る舞っているし、周りの人間も一緒になって悪ふざけしているとしか見えないと私は思いました。そして、あの戦争映画の衝撃的ラストを足しただけの分かりやすいチープな作りになってると私は思いました。