「リアルなのかな」決戦は日曜日 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
リアルなのかな
刑事になった同級生が(踊る大捜査線の)湾岸署のようすを「じっさい署内ってあんな感じなんだよ」と言ったのを覚えています。
カリカチュアとはいえ、つくりものの映像作品がじっさいの仕事現場のようすを、当たらずとも遠からずなリアリティで描いてしまうことがある──と思います。
この映画、決戦は日曜日は、おそらく本当の選挙や事務所のようすもこんな感じなのだろう──と思わせました。
候補者と後援会と事務所が一蓮托生であることや、かれらが失策をどのように糊塗するのかがわかります。
選挙に勝つため、なんども虚偽を塗り固めていくうちに、真実や常識などなくなってしまうことでしょう。そうやって平気で嘘がつける図太い「政治的人間」ができていくプロセスもわかりました。
ただし一方で有権者(わたし)もたいがいだと思います。
選挙は人気投票であり、いろいろとわかって投票している人は少ないと思います。
候補者が掲げる政策を把握して投票するのではなく、なんとなくまじめそうだったり、あたまよさげだったり、いけてそうな感じだったり、周囲の評判やインターネットミーム、あるいは“面白そうだから”などなどの、他愛ない動機で投票するのだと思います。
それゆえ黒歴史に封をして思いっきりいい人に見せようとする候補者の策に間違いはないでしょう。妙計も奇策もなく、ひたすらニコニコ笑って握手しまくれ──という話です。
握手したら投票してくれるかもしれません。えてしてそんなものかもしれません。生稲晃子や中条きよしがどんな政治家を目指しているのか知ったうえで投票した人がいたでしょうか?
有権者もたいがいです。
有権者は何をするのかわからない人に投票し、候補者は当選したら何をするのかわかっていないなら、お互い様です。しかるに選挙とはあるていど無理筋なものだと思います。もともと無理筋なものなら、俯瞰したとき狂騒的に見えてしまうのは仕方がありません。
が、政治家はなって(当選して)からだと思います。問題がわからないと問題意識も生じません。
この映画はすったもんだをへて政治家として立身する二世議員川島ゆみ(宮沢りえ)を描いています。
コメディではありますが、政治家ってあんがいこんなドタバタ劇から生まれるのかもしれない──と思わせる説得力がありました。
演出はあっさり。構図も決めずサクサクと早撮り感があります。ですが嫌味なく見やすかったです。嫌味とはアートっぽさとか、おもしろいことやってるでしょの承認欲などです。日本映画っぽい感じがなくてたすかりました。
キャストでもっとも印象的なのは小市慢太郎でした。ニマ笑いするとばりばりキャラ立ちします。とても上手でした。
また宮沢りえがいつも赤系の超高そうな服を着ていて、ときにそれが「だれがこんな赤を着るんだ?」というような鮮烈な赤でした。西麻布のレストランで見かけたマダム──という印象で、地方政治家ならもっと下々に寄せた服装をするべきでしょう。非現実的な外観でしたが、本作の見どころの一つでした。ショートヘアと衣装がキマり、エレガントな宮沢りえを見る映画──にもなっていたと思います。
この映画では堅さがありましたが宮沢りえがもっと思いきってあほな演技をするなら続編がいける気がしました。