劇場公開日 2022年1月7日

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「どのベクトルで見るかによって評価は大きく変わるかな…。」決戦は日曜日 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0どのベクトルで見るかによって評価は大きく変わるかな…。

2022年1月8日
PCから投稿

今年7本目(合計284本目/今月7本目)。

映画で扱われているのはもう公開情報ですが、選挙。日本の選挙には(一部の例外を除いて)公職選挙法が適用されます。行政書士試験ではこの法を直接問うことはまれですが、それこそ選挙のいわゆる「一票の格差」の裁判でこの法がよく登場しますので、合格者でも(リアル立候補しなくても)概要程度はつかんでいるくらいの感じです。

で、多くの方が書いているように、お正月からコメディものと見るか、政治が入った多少は「こういうことも考える必要がありますよ」という軽い問題提起型の映画と見るかによって評価はかなり違うと思います。私は後者の立場で見に行きました。うーむ…。

日本は映画に出てくるような選挙って想定していないんだろうな…とは思います。というのも、この映画には一切出てこない概念があり、それと組み合わせると破綻をきたすからです。今は便利に使われている「期日前投票」のルールです。
このルールがあるため、各陣営とも政治に対する思いなどは最初から最後まで一致していないといけないんです(そうでないと、期日前投票のルールが意味をなさなくなる)。

ただ、この映画はそうはなっておらず、ドタバタ劇を優先したために、「期日前投票がある」という観点から見ると、かなりの「迷惑な立候補者」な事案なように思います。いきなりリアル隣国(韓国/北朝鮮。便宜上、国扱い)に対する思想を言い始めたり等ですね。

公職選挙法の期日前投票のルールは何度か「緩いほうへ」改正され、当日仕事でなくてもレジャー等でも投票できるようになりました。そのため天気にもよりますが投票率は上がったと言われます。ただ、こういう「迷惑な投票者」には期日前投票のルールは合いません。選挙の時には選挙管理委員会等も「選挙の公平性」を重視して何も言わないことがリアルでは多いですが、実際、映画で出るような内容まであっちこっち政策思想やらが変わったりスキャンダルがどうだのとなると、期日前投票のルールを形骸化させることになります(要は、当日まで待ったほうが良い、ということになってしまう)。

もっとも、「期日前投票」に焦点は何もあたっていないのですが、「公職選挙法」という語は出ますし、そのことを考えると一切触れていないが実は「多くの人が被害を被ったともいえうるような選挙ごっこ」は、これは(リアルの世界で起きたら)どうなんだろう…とは思いますね。

  ※ 選挙に出るには、いわゆる「売名行為」を防ぐため、一定の供託金が必要ですが(法定の票数集まれば落選でも返金される)、供託金を高くしすぎると立候補の自由(憲法上は明文規定はないが「あるとするのが当然の解釈」というのが最高裁判例)が阻害されるので、実際も低く設定されており、大阪府知事や東京都知事といった選挙では30人とか40人とか出るというのはリアルでも発生しています。

 ただ、この映画で描かれている「いわゆる、有名政党と思われる新人が好き勝手やって大混乱させる」というケースだと、「期日前投票した人がなぜか損をする」という状況が起きてしまいかねないのであり、「選挙をおもちゃにしてはいけない」という点は強く思いました(リアルでも真似をする人が出るため)。

 ということで採点です。

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 (減点1.2) 正直、「お正月ドタバタ劇場」という筋で見るなら4.8とか5.0になるんだろうとは思います。実際、(ギャグ映画+政治映画)÷2 みたいな感じでしたし。ただ、「内容は少なめでも問題提起型の映画」と取ることも可能で、そうすると、映画内では一語も出ないが当然実施されている「期日前投票」をした人はこのドタバタに巻き込まれているも同じであり、配慮が足りなさすぎる(こういう描き方をすると、期日前投票をやめようとかという人がいても仕方がない。まぁ、一映画をどこまで反映させるかは人によります)かなという印象です。

 正直なところ、ここまでは書くつもりはなかったのですが、うーん…。どうなんだろう…(映画内で出ないだけで、当然に期日前投票の人をしている人に対する配慮がなさ過ぎなブレブレ内容。正直、そのブレブレが限界の度合いを超える)という感じでため息しか出ないです。
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yukispica