「容疑者の犯罪マニアが刑事たちを手玉に取る気の抜けた『セブン』」リトル・シングス 徒然草枕さんの映画レビュー(感想・評価)
容疑者の犯罪マニアが刑事たちを手玉に取る気の抜けた『セブン』
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田舎の保安官事務所にいるやる気のなさそうな保安官代理が、実はかつて凄腕の刑事であり、今も都会の警察署で語り草になっている。そんな彼の過去を聞いて、有能な警察署の刑事が今起こっている連続殺人事件の捜査に協力を依頼する。
さて、捜査が始まってみると、さすがに元刑事は秀でた捜査能力を見せ、周囲を驚かせるのだが、そこで浮上した犯人らしき人物にやがて2人は翻弄されていき、映画は知能の高い異常思想の犯人が刑事を翻弄し、犯罪に手を染めなければならないように仕向けられる『セブン』まがいの様相を呈し始める。
前半部分と後半部分ははっきり別物であり、有能な保安官代理は実は大チョンボをした過去のある人物だと判明。最後には若手刑事も同じ失敗をやらかしてしまい、そのまま救いはない。
その救いのなさも『セブン』と同じなのだが、唯一違うのは、同映画で刑事たちを翻弄するのは真犯人だったのに、本作ではそれはただの犯罪マニアに過ぎないという点だ。
これはかなり致命的で、それまで犯罪捜査の流れを追ってきたのは無意味だったということになり、捜査能力の乏しい刑事がマニアを殺してしまうだけの鬱映画という感想を免れない。連続殺人の犯人は最後までまったく手掛かりなし、というのも欲求不満である。
最後に保安官代理が刑事に送った髪留めは、かつて殺人の罪を揉み消してもらった自分と同じように、お前も殺人など忘れてしまえ、どうせ小さなことだ、というやり切れないメッセージである。
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