「真実と事実は似て非なる物」リトル・シングス REXさんの映画レビュー(感想・評価)
真実と事実は似て非なる物
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デンゼルワシントン、ジャレッドレト、ラミマレックのオスカー俳優が揃い踏み。
しかし、日本では非公開。
邦題もつけずらく、内容も確かに華々しくうけるものではないし、すっきりするものではない。
だけど、セブンなど他にもたくさん救いのない映画が公開されてきたにも関わらず、緊張感のあるサスペンスでありながら、色々深く考えさせられ、心にさざ波を起こすこの本作を未公開にするのはちと惜しいのではないか。
時代背景もやや古く(脚本の構想が数十年前だとか)、スマホなどは登場しない。だからこそ成り立つ心理戦のおもしろさがある。
スパルマは真犯人なのかどうか、結局分からない。しかしディーコンの中では犯人だし、スパルマが殺されたことで連続殺人がやむのであれば、逆説的に彼が犯人だった可能性が濃厚になるので、彼もそれでいいと思っている。
強迫観念に苛まされてきたディーコンにとっては、この結末は一つの決着だし、スパルマとの会話や高速道路でのやりとり、自分だけしかしらない細かな「事象、事実」の積み重ねが、彼が犯人だと確信するに至っている。
たった一つの弾痕、たった一つの髪留め。ディーコンの台詞の対象とは違うが、(リトルシングス)が運命を左右するのだな、と。
罪を犯した心はどのように救われるのか?
真実とは、本来は事実に依るものであるべきだとは思う。ただ、見たいものを見ることで救われる人生がある。
それが善いことであるかどうかは断ずることはできないが、ただ人が信じたいものを信じることで、前に進める生き物だということは事実。
三人の演技は目を離せないものがあり、見応えのある作品だった。
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