そして、バトンは渡された : 特集
永野芽郁×田中圭×石原さとみ“令和最大のベストセラー
を映画化” 命をかけたせつない嘘と秘密とは?この
感動は一生忘れない…って本当に泣ける?検証してきた
日本では毎年、数多くの感動作が公開されるが、「そして、バトンは渡された」(10月29日封切り)は一筋縄ではいかない“普通じゃない感動作”だ。
出演は永野芽郁、田中圭、石原さとみら人気と実力を兼ね備えた豪華俳優陣。主人公は4回苗字が変わった優子。ある日届いた母からの手紙をきっかけに、親たちの命をかけた“せつない嘘”が明らかになり、想像を超える“絆と愛”が紡がれていく感動の物語。そしてキャッチコピーは「この感動は一生忘れない」である。
ひと足先に鑑賞した人々からは、とにかく「泣ける」という評判がびっくりするくらい聞こえてくる。そんななか、宣伝文句を鵜呑みにしない“ひねくれ者”の映画.com編集部Oはこう思った。
「そうは言いますが、こんな僕でも、泣けるんですかね?」
ということで本当に泣けるかどうか検証すべく、本編を鑑賞してきました。
【見どころ】永野芽郁ら豪華キャスト陣が出演を熱望!
題名の意味に気づいた時、途方もない感動が胸を焦がす
本題の前に、サラリと作品概要と見どころをご紹介しよう。
[物語]優子のもとに届いた一通の手紙をきっかけにふたつの家族が交錯…あなたはきっと、この涙をこらえきれない
今日はじめて知った家族の秘密は、あまりにも切なく、愛おしい嘘でした――。
血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子(永野芽郁)は、わけあって料理上手な義理の父親・森宮さん(田中圭)と2人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中だが、将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり……。
一方、梨花(石原さとみ)は何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫な義理の娘みぃたん(稲垣来泉ちゃん)に目いっぱい愛情を注いで暮らしていたが、ある日突然、最愛の娘を残して姿を消してしまった。
そして優子のもとに届いた一通の手紙をきっかけに、まったく別々の物語が引き寄せられるように交差していく。「優子ちゃん、実はさ……」森宮さんもまた、優子に隠していた秘密があった。父が隠していたことは? 梨花はなぜ消えたのか? 親たちの<命をかけたせつない嘘と秘密>とは一体何なのか?
やがて、優子は想像を超える“愛”を知ることになる……。物語は原作とは異なるクライマックスを迎え、タイトルの本当の意味に気がついた時、極上の驚きと最大の感動があなたの胸にどうしようもなく押し寄せる。
[キャスト陣]永野芽郁、田中圭、石原さとみがテーマに深く感動し出演を決意
物語を体現するのは、人気と実力を兼ね備え、芝居でどう響き合うのかが楽しみになる豪華キャストの面々。NHK連続テレビ小説「半分、青い。」などで知られ、トップ女優の階段を駆け上がる永野芽郁が主演を務め、不遇な環境でもあっけらかんとした笑顔を絶やさない優子に扮する。
そして2021年の「父親にしたい俳優No.1」に輝いた田中圭が、優子の義理の父・森宮さん役に。永野との血のつながらない父娘という、一風変わった親子像を温かく表現する。さらに、そのライフスタイルが“理想の女性”として世の注目と憧れを集める石原さとみは、キーパーソンとなる“魔性の女”梨花を演じる。自身にとって初の母親(シングルマザー)役に挑戦しているので、要注目!
そのほか、梨花の義理の娘となるみぃたん役の天才子役・稲垣来泉ちゃんや、岡田健史、大森南朋、市村正親ら多士済々。ちなみに座長として現場を牽引した永野は、もともと原作の大ファンであり「母が原作を読んでいて『実写化したら芽郁に演じて欲しい』と言われていたので、母のためにも自分のためにも絶対にやりたい作品だと思っていました」と気合いは120%。心身ともに物語に深く共鳴した役者陣が込めた“幸福と優しさ”は、観客の心も満たしていく。
【原作は本屋大賞ほか総ナメ】全国の書店員からも
大・大・大感動の声「幸せになれる」「号泣した」
原作は瀬尾まいこ氏による同名小説。2019年に全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」の大賞を受賞したほか、「王様のブランチBOOK大賞」など数々のランキングで1位を獲得してきた“令和最大のヒット作”である。
原作の品質は折り紙付き。では、そんな原作を読んできた書店員たちは、映画版を観てどんな感想を抱いたのか気になるところ。全国から寄せられたコメントの一部を、ここに抜粋して掲載しよう。
「観た人は全員幸せになれる作品。とっても温かい気持ちになりました」紀伊国屋書店福岡本店 八尋さん
「原作を読んで泣いて、映画を観て号泣した。深い愛情が伝わってくる心あたたまる映画で、後味最高でした!」福岡金文堂姪浜店 大山さん
「すべてが繋がった時、鳥肌の嵐でした。最後は涙も止まらず、感動が溢れました。皆におすすめしたいです」紀伊国屋書店グランフロント大阪店 森さん
「2時間泣いたのは初めて。17分だけ泣かずにいれました」奈良蔦屋書店 梅田さん
「お腹は空いて、心は満たされる。一本の映画で多くの家族の形を味わい、形の違う愛を知った」匿名希望
実は、原作と映画はラストの展開が異なる。そのせいもあってか、筋書きを知っているはずの書店員の方々も、普通じゃない感動を胸にエンドロールまで見届けることができたようだ。
しかし、ちょっと待っていただきたい。ここまで「泣ける」という評判を目の当たりにすると、逆になんかこう「本当に?」という疑念がわいてこないだろうか。これはいっちょ、検証する必要があるんじゃないか――?
【検証】泣ける、泣けるって言うけど本当?ねえ本当?
宣伝文句を鵜呑みにしない編集部員が確かめてきた
映画.com編集部のOは「そして、バトンは渡された」の予告編を見て虚を突かれた。キャッチコピーは「あなたはもう一度見て、もっと泣く」。ふむ、そうきたか。直後、同作の公式HPを眺めていて、今度はいくらか斜に構えてしまった。作品情報の最下部に「92.8%が泣いた」「原作と異なるラスト。この感動は一生忘れない――。」と書かれていたからだ。
大きく出たな、と思った。これまで散々「泣ける」「全米が泣いた」「感動をありがとう」的な惹句を目にしてきたけど、いや、泣くかどうかの基準は人それぞれだしどうも客観性と具体性に欠けるよね、それに実際に自分で観て泣けなかったことは山ほどあるしなあ(早口)とも思った。しかし配給のワーナー・ブラザース映画が自信を持って「泣けます」と言っているからには、他の作品とは違う何かがあるのではないか。
これは観に行って確かめねばならないでしょう、映画情報サイトの編集者としては――そんなわけで、都内某所の試写室に「泣けるかどうか検証に来た」というめちゃくちゃ野暮な観客が紛れ込むことになったのである。作品関係者はさぞ迷惑だったはずだ。
上映が始まると、まず二組の“血のつながらない親子”が登場した。一方は永野芽郁と田中圭が演じる優子&森宮さん。高校3年生の優子が卒業式のピアノ伴奏を任され、様々な青春の道標をたどっていくという筋書きだ。
もう一方は、石原さとみ扮する梨花と、稲垣来泉ちゃん演じる “みぃたん”の物語。何度も夫を替える魔性の女が、ワケあって娘になった“泣き虫少女”と幸せに暮らすが……という様子が、優子たちの物語と交互に映し出されていく。
あらすじに“ふたつの家族が手紙をきっかけに交錯する”と書いてあったので、彼女らがどう交錯していくのかの仮説を自分なりに立て、その証拠を画面のなかから探すように観ていた。いわば謎解きの楽しさみたいなものが味わえて嬉しい誤算だった。予想してなかった感覚に出合えるのは映画の醍醐味である。
しかし謎解きはあくまでも“おまけ”に思えた。というのも優子に対する森宮さんの、みぃたんに対する梨花の、“血のつながらない子への無償の愛”が丁寧に、くまなく描かれていたからだ。観ていると、筆者自身がつらいとき他人や肉親に優しくされ、愛情を注がれたと感じ、心が温まった記憶がよみがえってくる。幸福感とかいろんな感情がしんしんと降る雪のように心に積もっていき、不意に目頭が熱くなるのを感じた。危ない! とっさに目にあらん限りの力を込め、涙腺を締め付けることで落涙を防ぐ(素直に泣けよ)。
そしてある地点で、物語の嘘と秘密が鮮烈に明らかになる。耐えに耐えてきた筆者の感情値は、そのころには未曾有の大豪雨を食らったダムの貯水量みたいになっていたので、涙腺はこらえきれぬように崩壊し、自分でも信じられない勢いで涙が瞳から流れ出ていった。愛おしい気持ちで胸がいっぱいになり、この感情を喚起するために丁寧に物語が編み上げられていったのか、とため息をついた。スクリーンに映る田中圭は滂沱の涙を流していたが、客席の筆者もだあだあと泣いていた。
その後も涙腺の修復はまあ間に合わず、市村正親がピアノの調律をしているシーンを観るだけで涙がにじむなど、もうなんか、完全にバカになっていたと思う。ということで「泣ける」というのは本当だった。少なくとも筆者の経験からは、嘘偽りはなかったと判断できる。
もうひとつ重要なことがある。泣いていたのは筆者だけではなかった。映画が始まって30分ごろからエンドロールまで、満場の試写室(もちろん感染症対策で座席数は削減されていた)のあちこちから、絶え間なくすすり泣く声が聞こえてきた。本作がテーマとして描いた“思いのバトン”は、我々にもしっかりと渡ったのだ。世のなかは全然明るくならないが、これだけは断言できる。本作を観れば、きっと幸せなひとときを味わえるはずだ。