劇場公開日 2021年10月29日

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「人の子、人の親であれば感動しないではいられない!!」そして、バトンは渡された バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人の子、人の親であれば感動しないではいられない!!

2022年1月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

離婚率の多くなった、現代社会ならではの設定にも思えるかもしれないが、親と子に「血の繋がり」がないというのは、なにも離婚だけではなく、戦争や災害によっても起こり得ることではあるし、海外においても2000年代以降、パートナーがいなくても人工授精によって妊娠したいという女性が増えたことや、LGBTがオープンになってきたこともあり、養子をとるという家庭も増えている。日本もそういった家族関係が今後増えていく可能性もある。

あらゆる状況によって、血の繋がらない家族関係というのは、今後増加傾向にあることは間違いない。そこで問われるのが、血の繋がりがなければ「母性」や「父性」というのは、芽生えないのだろうか?ということ。

『MOTHER マザー』(20)『マー -サイコパスの狂気の地下室-』(19)のように、実親であっても、いわゆる「毒親」と呼ばれる親を描いた作品も多く存在している。これも言ってみれば屈折した母性からなるものである。母性というのは、単なる形式的なものでしかなく、重要なのは血の繋がりの有無に関係なく、いかに相手を思いやることができるかだ。

森宮も初めて結婚というだけで、ままならない状況の中、さらに子供がいるということを土壇場で知らされ、急に環境が一変してしまう。「父親」とは何か?ということを常に自問自答しながら、自分なりの父親像を築いていく……。この過程が大切だと感じさせてくれる田中圭の好感度は上がりっぱなし。

ミステリー要素もある作品ではあるが、映画の宣伝においても頑なに隠され、ネタバレ規制をされている「秘密」や「嘘」は、正直言ってしまうと、前半でなんとなくわかってしまう。この秘密が何かを言葉ではなく、表情で感じさせる石原さとみの演技も必見だ。

今作が優れているところは、親と子のそれぞれの視点が絶妙なバランスで交差する点である。観る世代によって感じ方は違うかもしれないが、その時の自分の立場によって、感じ方がまた変わってくる作品だけに、何度観ても楽しめるだろう。

バフィー吉川(Buffys Movie)