「維新が躍進するのがわかる気がする」東京自転車節 kwmdさんの映画レビュー(感想・評価)
維新が躍進するのがわかる気がする
ラストショットで分かる通り、政治的な映画なので、政治的な感想を書くことをお許しいただきたい。
多くの人が見た方が良いという観点から星5つにしました。
今や労働者の半数が非正規雇用なので、景気の動向によっていつ誰が、Uber eatsの配達員になるかわからない。かなり努力しても最低賃金には届かず、人生設計を練り直したり、自分を磨いたりする余裕は全くない。それは恐らく政治や社会が悪いからなんだろうけど、それを考察するゆとりはもう無くなってしまうのでしょう。仕送りなどの生活基盤がある人以外は、一度落ちたら這い上がれそうにありません。
APAホテルに置いてあった本を読んでしまい、『人と人とを繋ぐ仕事』『今度はもっと笑顔を』と精神論に陥ってしまいます。荷物を渡すファストフード店の女の子のかけることがに意味を見出したり、もう普通の精神状態を保っていません。今の社会を変えたくない人が、精神論や愛国を提供するわけです。本当にすべきなのは適切な対価を支払うことなのに。
Uberの社員には恐らく1度たりとも会うことはなく、経営者は実際の『労働者』に一度も会うことなく、口座残高だけ順調に上がっていくのです。彼らはこの状況が永遠に続いた方が自分タチに有利なことはわかっているので、膨大なデータから絶妙な『賃金』や『クエスト』を設定し生かさず殺さずにいるわけです。
奨学金500万円借りて階層を上がろうとすると、700万円返済する必要があるようです。絶対に返済できません。現状を肯定する人たちは、彼らが中流になり適切な教育を受けたり、社会について考える余裕を与えたりして、自分達の地位を脅かされるのを恐れているのです。
さて、これを書いているのは2021年の衆議院選挙が終わった後です。
与党横ばい、野党左派減少、維新躍進という結果でした。
上記の変化を望まない、自分の地位が永劫に変わらない層の有権者の25%が与党に投票し、今の政府が作られています。
25%が野党左派に投票しましたが、小選挙区制では政権を取れません。
残りは選挙にいっていません。選挙に行かなかったのは、大卒でない若年層と分析されています。過去の事例から、彼らが投票し投票率が70%程度になれば、政権交代がどんな形にせよ起こります。
しかし、野党が提示した経済政策は、消費税の一時的減額、一時金の支給、エッセンシャルワーカーの待遇改善でした。Uber eatsの配達員であれば、どう評価するでしょう。消費税はそもそもあまり消費していないので減税額は僅かです。一時金はすぐに使ってしまうでしょう。エッセンシャルワーカーになんて、スキルがないので成れません。彼らは自分達より上の階層と考えるでしょう。もっとも、魅力的なのは維新の(竹中平蔵の)ベーシックインカム6万円ではないでしょうか。これがあれば、Uber eatsと合わせて10万円以上の収入が見込めますし、この政策は一時的なものではありません。
いくら維新の関係者に不祥事が多くても、品格が疑わしくてもこんないい政策はありません。新自由主義者のベーシックインカムは基本的人権としてより、階層固定の罠であったとしても、今安定して収入が欲しいわけです。森友さくら問題も、地球温暖化も、選択的夫婦別姓、LGBTQ+問題も、外国人労働者の人権も、そんなの普通に食べていられる人の贅沢品にしか思えないでしょう。(この映画を見ること自体贅沢に見えるかも)
我が国が民主主義国であるのなら、どこの政党を支持するにしても、政権交代が起こりにくく、投票率が低いことは、非常に不健全です(代議制民主主義が機能していないので)。選挙に行かない層に投票させるには、彼らに希望を持てる経済政策を強く押し出すしかないのではないでしょうか。それに、十分支持が集まれば、社会的正義や人権問題にも自然と取り組むことができると思います。
人通りの少ない新宿の街の大写の小池百合子、赤いテープでぐるぐる巻きの公園の遊具、人間の接客のないホテル、すでに日本が終わっているように感じました。