「雰囲気は悪くないが、兼三郎の行動が無茶苦茶なので感情移入しづらい作品」コットンテール Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
雰囲気は悪くないが、兼三郎の行動が無茶苦茶なので感情移入しづらい作品
2024.3.6 一部字幕 MOVIX京都
2023年のイギリス&日本合作の映画(94分、G)
妻の遺言を叶えるために旅に出る作家家族を描いたロードムービー&ヒューマンドラマ
監督&脚本はパトリック・ディキンソン
原題の『Cottontail』は劇中に登場するウサギの別名
東京在住の作家の兼三郎(リリー・フランキー、若年期:工藤孝生)は、妻・明子(木村多江、若年期:恒松祐里)を亡くし、途方に暮れていた
認知症から全介助状態になり、自宅で面倒を見てきたが、それも限界に達し、施設への入所を余儀なくされていた
息子・慧(錦戸亮)との折り合いも悪く、そんな二人を見ている慧の妻・さつき(高梨臨)も心を痛めていた
明子が亡くなり、寺の住職から遺書を渡されて困惑する兼三郎と慧
そこには「遺灰をイギリスのウィンダミア湖に撒いて欲しい」と書かれていて、彼女は生前から「ピーターラビット」をこよなく愛していたことを思い出す
兼三郎は一人で行こうと考えていたが、慧の計らいもあって、慧の娘・エミ(橋本羽仁衣)も連れて、4人で向かうことになった
1秒でも早くその湖に行きたい兼三郎は、イギリスに着いても気が休まらない
慧とさつきが買い物に出かけた際にも部屋にいておられず、エミを連れて、街を散策し始める
兼三郎は何事もなかったかのように帰ってくると、慧は激怒し、それが原因で兼三郎は別行動を取ることになってしまう
兼三郎は右往左往しながら列車に乗るものの、乗客からは反対方向に乗っていると言われ、降りた駅で途方に暮れてしまう
そこからは、適当な道を歩いていくものの、どこにいるかもわからずに、仕方なく牧場を訪ねることになってしまう
そこにはオーナーのジョン(キアラン・ハインズ)と娘のメアリー(イーファ・ハインズ)がいて、少しの暖に預かりながら、彼らの車でウィンダミア湖を目指すことになったのである
映画は、湖に向かう道中で過去のエピソードを思い出すという構成になっていて、現在パートと過去パートで同じ寿司屋が登場したりする
そこでの悪事はお粗末なものだが、兼三郎はイギリスでもチャリをパクったりするので、結構行動に問題がある人物のように描かれている
慧との喧嘩になっている原因が物語のキーシークエンスになっているが、それを言い出せないことが心にわだかまりを作っているように見える
慧は聞きたくないというものの、本心では「そうではない」と願っていて、それが確認できたことで、次のステップに進めるような感じになっていた
映画は、日英合作ということで、パンフレットやエンドロールは洋画のようなつくりになっている
ポートレイト的な感じに仕上がっているパンフレットは悪くなく、映画を気に入った人ならば、その世界観を崩さずに想起できる感じになっていた
エンドロールにて、真矢みきと光石研が登場して「どこに?」と思っていたが、どうやら「写真」で登場していたようで、繰り返し観る人は確認してみても良いかもしれません
いずれにせよ、雰囲気映画っぽさは否めず、ロードムービーという割にはイギリスっぽい場所があまり登場しない
親子の諍いがテーマになっているが、その軋轢の正体もスッと入ってこない部分があり、死生観も少し違うのかなと感じた
アルツハイマー型認知症になったようだが、その後の経緯というものがほぼ語られず亡くなっているので、結局何がどうなったのかわからないままだったりする
そのあたりは雰囲気で察する感じになっているので、細かいことが気になる人には向いていないのではないだろうか