「兼三郎にとってのコットンテール」コットンテール おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
兼三郎にとってのコットンテール
予告の切ない雰囲気に惹かれて鑑賞してきました。リリー・フランキーさんの持ち味が際立つ、素敵な作品でした。
ストーリーは、最愛の妻・明子を亡くした兼三郎が、「夫婦で訪れたいと思っていたイギリスのウィンダミア湖に散骨してほしい」という明子の遺言を受け、息子・慧とその妻と娘を伴ってウィンダミア湖を目指すというもの。言葉にするとたったこれだけの話なのですが、慧との衝突と兼三郎のさまざまな回想が、観る者の心を揺さぶります。
不器用で自分勝手だが、妻・明子への一途な愛だけは十分すぎるほどに伝わってくる兼三郎。その一方で、最愛の妻が自身以上に大切にしていた息子・慧とはぎくしゃくしています。おそらくこれまで二人の間を取り持っていたであろう明子が亡くなったことで、二人はこの旅で初めて向き合うことになります。
自分を邪魔な存在だと感じ、息子に迷惑をかけたくないと考えている父。父は自分の世界に足を踏み込まれることを拒んでいると考えている息子。互いに相手を気遣って遠慮していたのかもしれませんが、その思いはすれ違い、いつしか疎遠になってしまった親子。そんな二人が、この旅で初めて互いの思いをはっきりと口に出し、互いの胸の内を知ります。
幼き日に明子が追いかけたコットンテール。この旅で兼三郎が追いかけたコットンテールは、明子との数えきれない思い出とそこから見えるこれまでの自分の姿だったのかもしれません。妻との美しい思い出をずっと胸に抱き、変わりゆく妻の姿を目の当たりにしても変わらぬ愛情で支え続け、それでも最期に救うことのできなかった自分を責め続けてきた兼三郎ですが、このイギリスで世話になった父娘の在り方に触れ、息子家族と本音で向き合うことで、その絆をやっと本物にすることができたのではないかと思います。ラストで、ウサギを追う息子家族と兼三郎の姿に、明子の亡くなった後の新たな家族の形が見えてくるようで、胸に熱く沁みてきます。
主演はリリー・フランキーさんで、多くは語らず、表情と佇まいで魅せる演技が秀逸です。本作は、彼の存在なくして成立し得なかったと感じます。脇を固めるのは、錦戸亮さん、木村多江さん、高梨臨さん、工藤孝生さん、恒松祐里さんら。みなさんすばらしかったのですが、中でも若き日の二人を演じた工藤孝生さんと恒松祐里さんのキャスティングが完璧だと感じました。
今晩は。
ユナイテッドシネマ豊橋はメインですか!暫く行っていません。理由は岡崎、安城、刈谷の映画館で掛かる映画が多くなり(有難い限り。)豊橋までだと、車をブッ飛ばしても1.5時間かかるんですよね。
けれど、私はユナイテッドシネマ豊橋の比較的古いスクリーン1で見るのが好きです。(座敷がギシギシいうのも、良き。)では。
あ、流石に返信は不要ですよ。
共感ありがとうございます。
おじゃるさんのレビューに、なんだか感動しています。
まだまだ兼三郎父さんのまわりには何か起きそうですが新たな家族の形が支えあっていくのでしょうね。
今晩は。
「アーガイル」への共感有難うございました。
私が先週観た映画の中で、最も余韻に浸ったのは今作でした。
今や、邦画の名優である、リリー・フランキーさんの妻を亡くした哀しさを抑制した演技に魅入られました。
でね、毎回言ってますがおじゃるさんとは何処かの劇場で絶対に擦れ違ってますよね。
短髪で目つきの鋭いオッサンが真ん中より前に座っていたら、それは私です!では。