劇場公開日 2022年1月28日

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「分断の乗り越えの困難さ」クレッシェンド 音楽の架け橋 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0分断の乗り越えの困難さ

2022年2月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

イスラエルとパレスチナは、世界の分断の象徴みたいな場所だ。そこでイスラエル人とパレスチナ人の混成でオーケストラが結成される。両者の溝は簡単には埋まらない。合宿を経てもなお、互いをののしり合う。文化は世界を1つにすると理想論では語れるが、現実にそれを実行するのはものすごく難しい。本作は安易に理想的な「分断の乗り越え」を描くと見せかけて、分断を乗り越える困難さを語る。クライマックス、ガラスで隔てられた楽団員たちの奏でる音色だけがそのガラスを乗り越える。
ポスタービジュアルに明るい黄色をメインに使ったりしていて、ハッピーな雰囲気が漂っているが、無責任なきれいごとは描いていない、むしろ、弱々しいしい理想論を、厳しい現実で打ち砕くような結末を迎える。そのぶん、友和をあきらめないという姿勢の強さが際立つ。わかりあうことの難しさを真剣に見つめることから始めなくてはいけない。

杉本穂高