劇場公開日 2022年1月28日

  • 予告編を見る

「全て「自分で決める」ことができたらそれほどいいことはない」クレッシェンド 音楽の架け橋 talismanさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0全て「自分で決める」ことができたらそれほどいいことはない

2022年1月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

マエストロが言った台詞「よりによって南チロルで」がずっと気になっていた。なぜ「よりによって」なのかは、南チロルでの合宿でわかって、そうかあり得ると思った。その問題を出されるとイスラエルとパレスチナの問題に収まらず更に複雑になってしまうのにと思った。でもパンフレット(最近買うことが多いなー)を見たら、バレンボイムとサイードによって設立されたオーケストラがイスラエルとアラブの音楽家によって現在も活動していることを知った。そしてそのオーケストラの名称がゲーテの「西東詩集」であることを知ってマエストロのこの映画での存在意義を理解した。

最後のBolzano / Bozenの空港で、ロンが促しレイラ(目が素晴らしい)が答えて透明な壁を間にした皆の演奏はまさにクレッシェンドに相応しい「ボレロ」だった。マエストロはそこには居ない。演奏は自発的に生まれた。人間が始めたことをやめることができるのは人間だけ、は何かの映画で聞いた台詞だなと思いつつ、クレッシェンドが憎しみと対立の方向でなく、共存とリスペクトに向かってくれたらどんなにいいだろうと思った。

おまけ(長い)
マエストロ役のシモニスチェクは映画 "Toni Erdmann" でも元・音楽教師という設定でピアノを弾いていた。ドイツ語圏は親や豊さなど生育環境の影響も大きいがクラシック音楽が身近にある。オーディションでテルアビブ・チームに圧倒的に合格者が多い結果になったのは教育・教養や貧富の差や「音楽」の位置付けや捉え方が異なることも関係あるんじゃないかなあと思った。オマルが作曲した曲は典型的西洋のメロディーでなく彼らのメロディーだと思ったから。またテルアビブは多言語社会なので言語を介さない芸術活動、例えばコンテンポラリー・ダンスや楽器演奏が盛んであることも背景にあるのではないかと思った。彼らが合宿した南チロルが属するイタリアでは、素晴らしい若手の指揮者がクラシック音楽に関心を持って貰うために若者向けに本を書いたりと啓蒙活動を熱心におこなっている。裏返せばそれほどイタリア人はクラシックに関心がない。楽譜が読めないのも普通のようだ。一方で日本は東京だけでもアマチュア・オーケストラの数が半端ない。厳密な区分けをすると大変だけれど600とか700と聞いたことがある。コーラス入れたらものすごい数になると思う。週末は楽器ケースを持った人達を沢山見かける。小学校の音楽授業に始まり、中学以降は部活が加わり、大学や区や市のアマオケも盛んだ。

なんでクラシック音楽とかバロック音楽に感動できるんだろう?音楽教育の成果?神様?普遍性?明治時代の人は生まれて初めて西洋音楽を耳にして最初から感動したんだろうか?日本に生まれ育っても義太夫や長唄を初めて聴いて涙流すほどに感動できるかなあ。ある程度の知識と経験(聞くとか稽古)がないと難しい気がする。

talisman
Kumiko21さんのコメント
2022年2月8日

>明治時代の人は生まれて初めて西洋音楽を耳にして最初から感動したんだろうか?
→ 初めて生のオーケストラの演奏を聴いた明治の人たち。ちなみに一番気に入った「曲」は、と尋ねられた時の答えは、演奏前の音合わせの「A(ラ)」の音が(コンサートマスターから始まり)だんだん重なっていくところだったそうです。「雅楽」に似ている!ということで。

Kumiko21
Bacchusさんのコメント
2022年2月3日

いやーあれは怒っても仕方ないです!

Bacchus
Bacchusさんのコメント
2022年2月3日

若い人たちは気にしないのか考えが足りないのか、ちょっと信じられないですよね。

スマホもそうですし該当のカメラもそうですし、そういうもののおかげで?現代劇のサスペンスとかはリアルな脚本書くのが難しそうです。

Bacchus
グレシャムの法則さんのコメント
2022年1月30日

タブレット ✖︎
タブロイド ◯
あー、校正が欲しい。

グレシャムの法則
グレシャムの法則さんのコメント
2022年1月30日

不安感というよりも、危機感が足らないように思います。夕刊のタブレット誌なんかはいつも不安を煽るような見出しを派手に打ち出してますからね。
大事なのは、目に見える危機が迫っていなくても、いつも危機を想定することだと思ってるのですが、偉そうに言ってる私自身、ボーっとしてるので、説得力がまるでないのが一番の問題です。

グレシャムの法則
NOBUさんのコメント
2022年1月29日

今晩は。
 私は、普段、ロックしか聞きませんが、ビバルディの四季や特にムソルグスキーの”展覧会の絵”は、幼き頃から凄く好きでして。(彼の楽曲群は、ロックだと思っています。垣根を作るのは意味がないとも思っています。)
 ”なんでクラシック音楽とかバロック音楽に感動できるんだろう?音楽教育の成果?”
 については、個人の資質、嗜好だと思います。特に私は、激しいクラシック音楽はロックンロールだと思って愛聴しているので。
 音楽は世界の様々な溝を越える貴重なツールだと勝手に思っているNOBUでした。
 今作のラストシーンは、ベタですが、琴線に響きました。沁みました。
 私は、映画は出来るだけ肯定的に観たいと思っているのです。
 とても心優しき且つ博識なtalismanさんなら、分かって頂けると思いコメントしました。
 では、又。

NOBU