「これまでツタヤが作った映画の中で1番良いです」先生、私の隣に座っていただけませんか? 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)
これまでツタヤが作った映画の中で1番良いです
ツタヤなんとか2018年準グランプリとありましたが、グランプリはどんな映画だったのかと思って検索したらこの年はグランプリ該当作ナシだったみたいですね
でも、多分この映画はこれまでツタヤが作った映画の中で1番良いです
準グランプリに選ばれて映画化されてはいますけど、この企画の評価を低く見積もって、ほかの駄作にグランプリあげてたツタヤって映画産業に携わる組織として大丈夫なのかと少し不安になりました
10年後はTポイントもレンタルも配信も映画製作も全部しくじって、オシャレな書店に併設されたスタバのテナント料で儲けるだけの会社になってるんじゃないのかな?
映画の評価に話を戻しますと、復讐不倫に走ることをマンガの中で『道を間違えた』とか表現していることに監督のセンスを感じます
直接的な表現を避けて、出来るだけ遠回しで短いセリフを選ぶセンス
マンガ家の設定を生かしたメタフィクションな構成
とても秀逸ですね
ただ、ラストの夫が妻に不倫していたことを打ち明けようと直接対峙するシーン
あそこはマンガになったり現実に戻ったり、言葉で言えば良いことを吹き出しに書こうとしたり防いだり、というやりとりがすごくまどろっこしかったです
演出に失敗してます
あそこはマンガを生かした演出をもう捨てて、役者の感情的でストレートな芝居に頼ればもっと盛り上がったと思いました
それまでの感情を抑えた演出はそれで良いのですが、ここぞというときは感情が押し寄せて理性的では居られなくなってしまった人間のほうがリアルだし、よりドラマチックだったと思います
あと、先生の意味が教習所の先生ではなくマンガ家の先生だったとか、復讐不倫が現実と思わせて妄想で、でもやっぱり現実だったとか、そういうどんでん返しにこだわる必要は無かったと思いました
先生の意味がどっちかなんてただの言葉遊びでしかないし、どんでん返しをしたいがために、妻の本音や心情がオフになってしまってまったく読み取れない状態でした
愛する夫に裏切られて悲しい、悔しい、愛情が裏返って憎悪になる、不倫相手を殺したいほど憎む、でも、マンガ家としての夫は尊敬している、婚姻関係が破綻しても夫にはマンガ家として再起して欲しい、不倫相手と駆け落ちしたら母は1人で生きていけるのだろうか、もう会うことはできないかもしれない、母は許してくれるのだろうか、そういう不安を吹き飛ばすぐらい教習所の先生を深く愛している、この人と一緒ならもうどうなってもいい、そういう様々な感情や葛藤があったはずなんですが、そういうのが描かれていないし伝わってこない
主人公のドラマチックな心情をバッサリ捨ててしまってもいいから、言葉遊びとどんでん返しがしたかったのかもしれませんが、あのオチと言葉遊びにそこまでの意外性は正直無かったです
キャラクターが最初からずっと直接的で感情的な映画はバカっぽいので止めてほしいですが、ここぞというときは直接的で感情的でドラマチックな演出をできるようになれば、この監督さんの将来が楽しみだと思いました