クローブヒッチ・キラーのレビュー・感想・評価
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つまり神は、常にドアを開けていて、入るか否かは我々次第です。
かつてあった連続殺人事件。おそらく殺人鬼は、その用心深さゆえに、周囲にその"性癖"は隠し通していただろう。だから事件は未解決だったのだ。そして些細な変化(タイラーの態度、鍵、)にも容易に気づくのだ。その犯人が父ではないかと疑う息子タイラーと、疑われた父ドンの、静かで周到な駆け引き。タイラーは、ドンを疑い、違ってくれとすがる気持ちで惑う。それが確信に変わったあとの行動と結末の意外性。タイラーの行動は衝動的だったのではないか?根底になる父への愛情が、そうさせたのではないか?
幸せそうなキリスト教徒らしい家族の団らん。今は何事もない穏やかな田舎のコミュニティ。・・・それは、終始こわれることない。この事件が結末を迎えても。つまり、いま自分が暮らしている生活にも、これと同じ闇があるかもしれない。人に言えない性癖のやつならいるだろう。家族に隠し持っているものもあるだろう。殺人鬼はいずとも予備軍ならいくらでもいるだろう。そして、"神の開けたドア"に入ることを拒み、罪を十字架のように背負って生きているやつもいるだろう。そいつは自分の人生を捨てた覚悟のはずだ。たぶんそれゆえに、周囲からは、"慎ましいリーダー"のように見られるのだ。
知るべき真実とは。
10年ほど前まで猟奇的な連続殺人が起きていた町で暮らす主人公タイラー。父の車から怪しい写真が見つかったことから、実は父こそが犯人ではないかと疑うようになり・・・といった物語。
父のドンはボーイスカウトの隊長(?)を務めており、家族との関係も良好。息子にガールフレンドが出来たと喜び踊る一家・・・良い家族じゃないか。
それでも、疑心を拭いきれないタイラーはキャシーと協力しながら真実を探求していき、そして・・・。
古風な効果音ともの寂しげな町の空気感で雰囲気はグッド。
まだ10代半ばのタイラーの、真相を知りたい想いと、直視したくない現実の狭間で揺れ動く様子に胸が痛む。
成長物語・・・とは違うけど、揺れる想いの傍ら、小さな決意が垣間見えるシーンはどれもタイラーを大人の表情に近づける。
そう、ノラにだって家族がいたのだ・・・
そして迎えた山場。
哀しく響く乾いた音は決別の合図か?
信頼と裏切り、ささやかな願いと虚しさの詰まった名シーンだった。
考えてしまいますね~。
最初の写真を見つけてなければ・・・知らぬが何とかと言いますが、この結末ならばどっちが良かったのだろう・・・観た皆さんはどう思ったでしょうか。
重々しい塊がズシンと心に残るような作品だった。
それと、免許ばかりじゃなくて、もうちょっとエグいモノが発掘されて欲しかったかな~。それこそ図面通りの・・・。
別にサイコな描写が好きなわけでは無いけれど、そこら辺のドキドキをもうちょっと味わわせてくれれば、更に高評価だったかも。
怖いというよりも感心させられる作品
面白かった。ホラー映画だろうと思って鑑賞したのだが、そうではなくて、父親がシリアルキラーではないかと疑問をいだいた息子の勇気ある行動の物語であった。
とはいっても気の弱い真面目な16歳の少年で、キリスト教原理主義の町での話だから、できる行動には限りがある。加えて身内にシリアルキラーが出てしまえば、残された家族は後ろ指を指される。ましてやキリスト教原理主義の町である。食料調達もままならないだろうし、家を燃やされるかもしれない。
少年と少女の追求は遅々として進まず、途中で証拠を失ってしまう間違いも犯しながらも、徐々に真相に迫っていく。本当のことを知ることはとても恐ろしい。しかし知らなければ、この先嘘を吐き続けることになるかもしれない。少年は迷い途方に暮れるが、明晰な少女の言葉に導かれるように行動し、ついには真実と向き合う。そして決断を迫られる。
少年の選択に感心した。少年には母親と妹がいる。彼らがこれからも安全に暮らしていく方法はひとつしかない。明敏な少女は一瞬にしてそれを理解し、少年とともに最後の片付けを行なう。
主人公の少年タイラーを演じたチャーリー・プラマーは名作「荒野にて」でのひとりでの演技もよかったが、本作では人との触れ合いの中で、恐怖、わだかまり、欲望、愛情といった感情が入り混じった複雑な表情が素晴らしかった。
対して父親役のディラン・マクダーモットの存在感がいまひとつ。もっと底知れぬ力強さや滲み出る悪意などを出して、タイラーを肉体的にも精神的にも追い詰める恐ろしい父親を演じてほしかった気がする。
当時23歳のマディセン・ベイティだが、十代後半の少女の役も難なくこなしていた。この年頃の少女は、同じ年頃の少年にとって自分のキスがどれだけの力を持つかをよく知っている。落ち着いた、いい演技だったと思う。
グロいシーンはないので安心して観られる。物語を冗長に陥らせない演出がとてもいい。次から次へと展開していくので、目が離せなかった。少年と少女の行動と決断が見事で、怖いというよりも感心させられる作品だった。
(上映されている映画館は少なめですが)わかりやすいし良い内容。
今年64本目(合計130本目)。 ※まだ書いていないのが大量にあるので実質的には70本目くらい。ぼちぼち書いていきます。
この作品、どうも「映画館を探す」で調べると、そもそも論で現在、2館でしか放映されていないんですよね…(理由は謎。そんなに変な映画でもない)。
閉鎖的というほどでもないですが、かなりの田舎が舞台のサスペンスもの。登場人物がそれほど多くはないので、物語の前半から最初に誰が犯人であろうという点は95%推測はつきます。
それだけだと普通のサスペンスものですが、かなりの閉鎖的環境の田舎が舞台なので、ここにさらにキリスト教の教会やボーイスカウト活動(この2つって何らか関係性あるんでしょうか?)が絡むと事情が複雑になり…というひねりが入っています。
日本では、ああいうもの(ネタバレ防止、物語内で、ひそかに保管しているもの)を「正当な方法で所持している「だけ」」であるなら、まぁ白い目で見られてもどうこう言われることは普通ありません(まぁ、道徳的にはかなりまずいですが…)。ただ、そこにキリスト教の教えや閉鎖的環境という問題が絡んでくるとそうもいかなくなります。また、そういうものを「持っているだけ」で、勝手に嫌疑がかけられるわけでもなく(せいぜい、怪しいなぁ、程度でしかない)、この辺は難しいですね…(日本とアメリカの宗教観の違いなど)。
一応、不穏当な表現・描写はありますが、一方で、単なるサスペンスものでもない、という点は結構ひねりが入っていますし、最初にもう犯人はこの人、っていうことがわかるので、そこをどう主人公たちが確固たる証拠をつかんで追い詰めていくか、そういう部分に後半は移っていきます。ここは色々な考え方があると思います。また、他の方のレビュー通り、このような事情のため、TENETのように「時間ずらし描写」が入りますが(後半、ネタバラシをするところ)、それも最低限ですし、それもないと意味不明になってしまうので、それは許容範囲内だと思います(逆にこれがないと、何が何なのか、推測して視聴しろになり、かなり難易度はあがってしまう)。
評価は下記を考慮してフルスコア(七捨八入)でフルスコアに切り上げています。
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(減点0.1) 単なるサスペンスものという考え方も可能ですが、この映画は上記のように、キリスト教文化やボーイスカウト活動などの文化を知っていないと理解できない点が多少なりともあり、その説明は少なめなのでわかりにくい人もいるかな…という印象はあります。とはいえ、日本ではこういう活動は決して盛んではないですし(コロナ事情で、教会さえ開いていなくてオンライン(youtube)ミサだったりするし…)、それほど深く知識が求められるわけでもないですし、知らないと理解不能に陥るわけでもないので、大きくは考慮しませんでした。
※ ただし、キリスト教独自の結構難しい語彙レベル高めの単語は、他の映画に比べると容赦なく出ます(字幕が丁寧なので、あまり気にはなりません)。
(減点なし/他事考慮)シネ○ート心斎橋さん、「携帯電話の電源はオフにお願いします」とのことですが、全興連の「新しい映画観賞のマナー」の放映の中では「ココアを導入している場合はマナーモードにしてバッグに閉めてご鑑賞を」であり(電源を切ると、ココアは動きようがない)、どちらが正しいのか謎です…(多分後者)。
また、この映画自体はG指定ですが、上映前の「予告編」でR18の映画の紹介(かなりグロテスク。アダルトなのではなく、表現がどきつい)をするのはどうなのか…と思いました(女性の妊婦の方を襲うという趣旨のホラー映画。見に行ったときは男性女性半々程度だったので、予告編といえどもあのグロテスクさだと、結構気持ち悪くする人はいかねない/ほかに他に放映予告作品もあるのに、なぜにR18映画の予告編を入れるのかがかなり謎)。
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思春期ホラーの傑作!
大きな謎解明
…と思いきや、そこからがまた面白い!
よく考えたら本来ありえないコンビだし、あまりスッキリしないラストにはもどかしさすら感じたが、振り返ると今まで観たことのない結末だったことで改めて評価を上乗せした。
スティーブンキングも絶賛、との宣伝文句は偽りなしだったが、何故もっと拡大公開しないのか、出来なかったのか不思議。
なかなか衝撃的な展開で…。
片田舎、宗教、閉鎖的な街、絵に書いたような幸せな家族、といろいろ絡み所が多くじっくりどっぷりこのサスペンスに引き込まれた。ラストの父親の行動も予想外だし母親もどう絡んできたのか…謎のままな不安定さもよい。ただ、ラストはわかるけど府に落ちず、ちょっと納得させられない見せ方が残念。
クリスチャンのコミュニティ
アメリカ合衆国の典型的な郊外の話なんだろうな。家庭での食事前のお祈り、あれはプロテスタント特有だと思う。知り合いのプロテスタントのお家(ドイツ)でも温かい食事の前は手をつないできまった言葉をみんなで言ってから食事が始まった。近所の人達は互いに知り合い、日曜の昼食後の散歩で彼らと立ち話をして情報交換。
教会中心のコミュニティーは狭い。洗車を子ども達がするのもボーイスカウトもとってもプロテスタント的でアメリカ的な気がした。家庭を大事にする父親。でも狭い地域で活躍するといっても子ども相手。昔の西部劇の時代ではもはやない。だから妻は夫の性癖をわかってたのではないかと思う。
マッチョな風土と女性をターゲットにする連続殺人は関係あると思う。昆虫採集みたいに写真や動画で記録されて保管されてそれを後から味わう。仕留めた獲物を眺めるように。スウェーデンの「ドラゴンタトゥーの女」も同様だった。必ず銃と縄がある。
そういう話に思春期のかわいい男の子が絡むから面倒なことになる。いろいろと関心を持ち始める時期と父親の「趣味」発見が重なってしまった。
タイラーにはあのコミュニティーから出て行って欲しいと私は思った。
保守的価値観が生むシリアルキラー
本作の舞台となるケンタッキー州は、キリスト教保守派が多く住む地域を指す「バイブルベルト」に位置する。
いかがわしい写真を持っていただけでとあっという間に噂になり、信仰が足りないとして蔑まされるという。具体的な説明はないけど、本作の小さな町もおそらくバイブルベルトだと思われる。
そんな統率の取れた、言い換えれば抑圧された環境だからこそ、その反動がシリアルキラーを生むというアメリカの暗部を、見事に描いていると言える。もちろん、「信仰=邪」とするのは早計だけど。
人間誰しも知られたくない過去はある。それは友人間、恋人間、そして家族間にもあるもの。その過去が忌まわしきものだったら…中盤で一気に展開が変わり、終盤での決着のつけ方が哀しくて切ない。
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