クローブヒッチ・キラーのレビュー・感想・評価
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ポラは濡れていないし振っちゃダメ
信仰心の強い田舎町で発生した「グローブヒッチ」と呼ばれる犯人による連続緊縛殺人が止まって10年、16歳の少年が父親を疑う話。
ボーイスカウトの指導者である父親を持つ主人公が、車の中でみつけた雑誌の切り抜きが基で四面楚歌となり、その出所に疑問を持ち巻き起こるストーリー。
信仰心皆無な自分からしたら、洗脳かとも感じる程の信仰心を持つ背景の中で、疑念の目が犯人の本性を呼び起こし、沈黙を破らせて行く様には期待値が高まる。
そんなワクワクとドキドキなお話しがテンポ良く展開していき…実は、と巻き戻されたのは、そんなの判りきっているのに何で?テンポ乱すだけじゃん!一回目のヤツいらないじゃん!わざわざ説明いりますか?と少し醒めてしまった。
とはいいつつも愉しみながら少し冷静になったところで山場をみせられて、再びストーリーに乗っかって持ち直し!!
「カチッ」っていう件、どちらの心情を考えても堪りません!!
エピローグの後出しは流れ的には気にならなかったけれど、血を流し気を失う程なのに痕跡は?と最後の最後で又少し勿体なさを感じさせられた。
と、演出に難が多々あったけれど、こういう気分の悪いヤツが好きな自分的にはなかなか面白かった。
なかなか衝撃的な展開で…。
片田舎、宗教、閉鎖的な街、絵に書いたような幸せな家族、といろいろ絡み所が多くじっくりどっぷりこのサスペンスに引き込まれた。ラストの父親の行動も予想外だし母親もどう絡んできたのか…謎のままな不安定さもよい。ただ、ラストはわかるけど府に落ちず、ちょっと納得させられない見せ方が残念。
クリスチャンのコミュニティ
アメリカ合衆国の典型的な郊外の話なんだろうな。家庭での食事前のお祈り、あれはプロテスタント特有だと思う。知り合いのプロテスタントのお家(ドイツ)でも温かい食事の前は手をつないできまった言葉をみんなで言ってから食事が始まった。近所の人達は互いに知り合い、日曜の昼食後の散歩で彼らと立ち話をして情報交換。
教会中心のコミュニティーは狭い。洗車を子ども達がするのもボーイスカウトもとってもプロテスタント的でアメリカ的な気がした。家庭を大事にする父親。でも狭い地域で活躍するといっても子ども相手。昔の西部劇の時代ではもはやない。だから妻は夫の性癖をわかってたのではないかと思う。
マッチョな風土と女性をターゲットにする連続殺人は関係あると思う。昆虫採集みたいに写真や動画で記録されて保管されてそれを後から味わう。仕留めた獲物を眺めるように。スウェーデンの「ドラゴンタトゥーの女」も同様だった。必ず銃と縄がある。
そういう話に思春期のかわいい男の子が絡むから面倒なことになる。いろいろと関心を持ち始める時期と父親の「趣味」発見が重なってしまった。
タイラーにはあのコミュニティーから出て行って欲しいと私は思った。
父親の素顔
主人公の16歳の少年タイラーは父親が率いるボーイスカウトで精進している。
ある日彼女が父の車からポルの写真を見つけ周囲からヘンタイ扱いを受け孤立する。
タイラーにとってはもちろん自分には身に覚えのないポルノ写真。その真相を突き止める為父親のガレージなどに忍び込み徐々に父親の隠れたそして行き過ぎたSM絡みのポルノ趣味を知ること。
同時に10年前にこの町で起きた十数人の被疑者を絞殺した事件に父親が絡んでるのではないかと疑う。
同じく学校内で変な噂が立ち孤立している少女カッシと父親の真相を追っていくストーリーである。
登場人物が少ない為早い段階で父親が殺人鬼である事は読める。また少女カッシは母親がおらず、母が父親の被害者であることも早い段階で読める。そういう点においては大きな裏切りある展開ではないがこの作品の面白いところはやはり少年タイラー視点から父親を疑い追い詰めていく心理描写がこの作品はとても見応えあり惹きつけられた。
早い段階で疑い父に問い詰めるもやはり父の口車に乗せられまた父の言う事を信じたい気持ちが先行してしまう。
ただ100%疑念が晴れたかというとそうではない。そのモヤモヤする葛藤と父に母を殺されたカッシの存在が彼の正義心を後押しする展開は見やすい。
カッシのサポートもあったとはいえ最後の最後まで父を信じ、殺人犯ではなく父として葬ったところは本来父親が持つべき家庭への責任感を16歳のタイラーなりに果たそうとしたように見えた。
犯人とはわかっていながらも父親とタイラーの身を案じながらハラハラドキドキしながら見れて楽しむことができた。
保守的価値観が生むシリアルキラー
本作の舞台となるケンタッキー州は、キリスト教保守派が多く住む地域を指す「バイブルベルト」に位置する。
いかがわしい写真を持っていただけでとあっという間に噂になり、信仰が足りないとして蔑まされるという。具体的な説明はないけど、本作の小さな町もおそらくバイブルベルトだと思われる。
そんな統率の取れた、言い換えれば抑圧された環境だからこそ、その反動がシリアルキラーを生むというアメリカの暗部を、見事に描いていると言える。もちろん、「信仰=邪」とするのは早計だけど。
人間誰しも知られたくない過去はある。それは友人間、恋人間、そして家族間にもあるもの。その過去が忌まわしきものだったら…中盤で一気に展開が変わり、終盤での決着のつけ方が哀しくて切ない。
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