劇場公開日 2021年7月23日

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「2021年最大の"怪"作?「映画版」五種競技?でも、見る価値は…あり。」最後にして最初の人類 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.52021年最大の"怪"作?「映画版」五種競技?でも、見る価値は…あり。

2021年7月24日
PCから投稿

今年86本目(合計150本目)。

同じ題名の小説(1930年)が元にあり、それを下敷きにした作品のようです。
ただ、それだとSFものになってしまうため、チトー政権において、ユーゴスラビア内に、第二次世界大戦の俗にいう枢軸国による占領や、チトー率いる人民解放軍の活躍をたたえて作られたもの(1970~1980)が、映画内に出てくる巨大建築物です(ただし、映画内ではこれらの説明は一切ない)。

内容がかなり特殊で、女性が延々と話している以外、人は一切出てきません(よって、最後の著作権表示も、音楽作者や編成責任者などで「○○役 ××」というような表記は一切出てこない)。元の小説をそのまま要約するような形だと、著作権上の問題もありますし、そもそも「終わらない」ので(70分どころか、700分あっても無理)、1930年の小説を下敷きにしながら、1970~80年の巨大建築物も絡めて、ストーリーの一節(良いところ取り、という感じ?)を作っているような感じです。

 ただ、ここ(や、似たような映画評価サイト)で情報を得ているなら「そういう映画なんだな」ということで問題は起きないと思いますが、そうでない場合、「これ何ですか?」という点はやっぱり否めません。

配給はシンカさんで、最近だと「ラブ・セカンド・サイト」もこの会社の映画ですが、かなり毛色が違います。そういう事情があるため、ツイッターの公式アカウント上で、この小説(なお、日本では2004年に原作の日本語訳が発売されるも、現在では絶版。kindleなどでも無理)の序説が、許可を得て公開されています(期間限定/詳細はシンカさんの公式ツイッターアカウント)。

上記の事情により、天文(特に、太陽系)に関する知識は前提であるものの、チトー政権やユーゴスラビア政権などの知識は不要な一方、逆に哲学的な事項(人とは何か、精神とは何か、考えるとは何か…)、生物に関することなどなど、分野違いのことを次々問うてくるので(上記のように70分で、誰かが回答してくれるというわけではない)、ある種「映画版五種競技」みたいな状況になっていて、相当な知識がないと、建築物よかったなぁ…で終わりかねない感じです。

個人的には、まぁ確かに「異質な映画」だとは思うけど、こういう映画を見ることそれ自体にも教養は広まるので(理系・文系を問わない知識の向上)、特に低評価にしませんでした。

 なお、1人がずっと話しかけるという性質上、「映画の英語がどこまで聞き取れるのか」という「リスニングテスト」にも使えるんじゃないかな…とさえも思います(まぁ、目的外使用だとは思いますが…。準1くらいあればいけます)。

 採点は下記の0.3のみで、4.5までとしました。

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 (減点0.3) この映画、2020~2021年にしては珍しいモノクロです(厳密にはモノクロではなく、「ある色」がテーマで出るが、実質的にはモノクロと言える)。そして、「登場人物が誰もいない」「複数の分野に精通していないと理解が難しい」、さらに「前提となる小説は日本では購入すらもできない」という状況であるのなら、公式サイトももう少し、どういう映画か、説明ないし、無料公開分で見せるべきだったのかな…とは思います。

 (※) ここや、他の評価サイトを参考にいく分は、何の問題もないが、誰もがこういうサイトを参考にするわけではないので。

 (減点なし/保留/判断不明) この映画において「海王星」という語が「最後の希望」という形で出ます。「現在では」太陽系の最も内側にある惑星は海王星です。
しかし、この映画の原作となった小説は1930年発売で、実は冥王星の発見も1930年です(実は、同じ年)。
ただ、冥王星は人が済むには明らかに適さない小さい惑星(当時。今は準惑星に格下げされている)であることは発見当時から知られていたので、あえて無視したのか、作品のほうが早くて冥王星が頭の中になかったのか、知識があると余計に混乱するなぁ…と思えました。

yukispica