劇場公開日 2022年2月25日

「この世界のフラストレーションに1本のリボンを。」Ribbon はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この世界のフラストレーションに1本のリボンを。

2022年2月28日
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鑑賞方法:映画館

のんが脚本、監督、主演を務めたアーティスティックな1本。2020年コロナ禍。奪われた学生生活。途方に暮れる美大生のいつか。この4年間は無駄だったのか。母親に遊びと揶揄された作品は果たしてごみなのか。

マイペースでちょっとあまのじゃくないつかとクセの強い家族。友人の平井に顔も思い出せない同級生。自粛、マスク、ソーシャルディスタンス。それでも誰かと笑って、泣いて、喧嘩して日々は続いてゆく。基本画面に2人以上映りません。いつかの独り言や1対1の会話で進んでゆくのが、この状況下をうまく表現していると思った。

なによりのんと山下リオがすこぶるかわいい。渡辺大知は相変わらずの安定感。部屋の散らかり具合もめっちゃ落ち着く。こんな世の中になって私みたいな夢も希望もないおばさんでも辛いのに若い人達は本当に気の毒でならない。それでもこれで過去も未来も全てを失う訳ではもちろんない。

光が射し込む部屋に大量のリボンが舞う。きつく結ばれたり、誰かを彩ったり、時には傷を隠したり、風に乗ってゆらゆらしたり、いつだって自由でいい。ラストシーンが心地良かった。

はるたろう