「初監督作とは思えない端正な作品」Ribbon よしえさんの映画レビュー(感想・評価)
初監督作とは思えない端正な作品
のんが初監督作として監督脚本主演を努めた、コロナ禍における創作、表現についての有り様を切り取った作品。
わたしは『あまちゃん』以来能年玲奈という女優に惚れ込んでいるので、どうしてもカノジョの作品に対する評価が甘くなりがちなんだけど、この映画については贔屓目なしに良かったと感じた。
コロナ禍という現実を創作に持ち込み、ただ閉塞感だけを描くだけでなく、それなりの幸福感のある人間関係も描きつつ、それでもやはり現実のやりきれなさが、表現という手段への向き合い方として描かれている。モチベーションの喪失と回復の過程が非常に良い。また、エピローグで提示された「作品」は、その過程からの結実としても美しいけれど、単に美術作品としても良いものであった。
それにしても、冒頭の感想に立ち返るけれど、初監督作品にしてこの堂々たる仕上がりぶりは称賛に値するものだと思う。ずっと目の片隅で追いかけてきたものとしてはむしろ誇らしささえ覚える。
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