劇場公開日 2021年6月12日

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「人間の身勝手さに振り回される野良犬の運命」犬は歌わない 015🎬さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人間の身勝手さに振り回される野良犬の運命

2021年7月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

その昔、アメリカとロシア(ソ連)の仲が今以上に冷え切っていた頃、両者は何かとお互いを打ち負かしたいと思っていたそうですが、その中のツールのひとつとして『宇宙開発』があった―というのは、教科書上での知識です。確か。

で、その『宇宙開発』に当たり、有人飛行を叶えたいが、まずは動物から打ち上げてみよう。手始めに犬とか良いんでないかい―というのがライカ打ち上げの理由のようです。

ところで。

この映画の九割方は主人公の野良犬の目線で撮影されています。
野良犬が人語を喋ってくれるようなハートフルな映画ではないので、車を襲撃したり、道行く人にちょっかいをかけたりする犬の映像に、時たま人間のナレーションが被さるという具合です。
人間のナレーション曰く、宇宙に行ける犬は野良犬から選出される、と。
それも、ちょっとやそっとでは動じないような勇敢な犬が選ばれるとのことです。

そこで映像が切り替わり、スペースシャトルに乗る準備をする犬の、恐らくは実際の映像が流れる。

これ、かなりショッキングな映像です。
犬の地肌に直接、電極っぽいものが取り付けられる場面とかあります。
喉にガーゼが貫通するような場面もあります。

なんかナレーションは宇宙に行ける犬として選ばれることは名誉なこと、みたいな空気感出してますが、その後で軌道を逸れて戻ってこなかったスペースシャトルの話とかしてるので、まあ皮肉ですかね。

じゃあ、宇宙に行く犬として選ばれなかった野良犬はどうなるか。
この映画の終盤でちゃんと言及はありますが…なんて言うか、人間って本当に身勝手だなあと思いました。

なお、原題はSPACE DOGS。まんま。
邦題の『犬は歌わない』ですが、劇中によく出てくるカフェと映画館とバーの複合施設みたいなところで、水ばっか飲んでだんまりをキメる犬達の場面があるので(対比として娯楽を楽しむ人間達の姿も出ている)、その辺からかなあと。

BONNA