「それぞれの想い・立場」ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ talkieさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの想い・立場
アメリカの人種差別問題は今に始まったことではなく、いわば「古くて新しい問題」だと思うのですけれども。
彼女の時代には、今の比ではなかったのかも知れません。
古くは1930年代から始まったという公民権運動ですが、当局としては(その是非はともかく―否、普通に考えればそれが当たり前であるからこそ)運動が燎原の火の如く一挙に広がり、勢い余って社会が転覆してしまう(世の中がひっくり返ってしまう)ような事態だけは、何としても避けたかった筈ですから、運動の過激化には、当局は神経をすり減らしていたことに間違いはなかったろうと思います。
そんな中で「奇妙な果実」を歌い続けようとする彼女の気骨には、素直な感動を覚えます。評論子は。
彼女が歌っていた当時、彼女の周囲は、漸進的に事態を改善する動きであったようにも思われます。
例えば、(これは、どうやら本作での架空の人物のようではありますが)捜査官のフレッチャーが(彼女と同じ黒人でありながら)FBIという権力側の機構に食い込んだのは、そこで実績を積むことで黒人の地位を改善していこうと考えていたとも推察できます。
(FBIの側には「黒人被疑者に対する捜査には黒人捜査官が何かと便利だし、白人捜査官が直接にタッチする=手を汚さずに済む」という打算があったのかも知れませんけれども。彼女の拘束について、結果としては、白人であるアンスリンガー長官に、いいように使われてしまっている。〉
歌うことで急進的に事態を改善しようとする彼女の眼には、周囲の漸進的にコトを進めようとする同胞たちも、彼女に対する「抵抗勢力」に映ってしまっていたのではないかとも思われました。評論子には。
そうであったとしても、そうではなかったとしても、彼女の「生き様」ということでは、観ていて胸が痛くなりそうな一本ではありました。
公民権運動に対するそれぞれの想い・立場ということでは、佳作ではあったと思います。本作は。
<映画のことば>
政府は人権を忘れがち。
マサシさん、こめんとありがとうございました。「人種のるつぼ」ともいわれるアメリカですが、もともとは奴隷(労働力)として自分たちが連れてきた人たちがルーツと思うと、複雑ですね。
これからもよろしくお願いします。
僕は高校の恩師から『公民権運動も疑え』って教わりました。『公民権運動は黒人をベトナムへ行かせるためさ』って言っていたのを思い出します。真意は兎も角。そのくらいベトナム戦争って酷い戦争だったと記憶します。
長くなりました。すみません。