「ライフル使わねえのかよ」グリーンランド 地球最後の2日間 つなさんの映画レビュー(感想・評価)
ライフル使わねえのかよ
多少の自己中は非常事態だからしゃーないなと極力主人公側に立って鑑賞するように努力したが、それにしたって胸糞悪すぎて結局最後まで感情移入出来なかった。
仲の良かった近所の住人家族を見捨てるという苦渋の選択を物語序盤に経験したにも関わらず、夫も妻も選ばれた者の証であるリストバンドを袖で隠すなどの配慮もせず、選ばれなかった人間の前で平気でペラペラと喋ってしまう。バカすぎ。
一家はぐれたにも関わらずものの数分もその場で待てない。バカすぎ。
車に行き先のメモを残すという知能は働く割に指定の父の家というのがもうとてつもなく遠い。あんなに遠いなら一旦徒歩圏内の別の場所で合流しようとか思わないのか?
というかあのメモを残すシーンを見ている段階では父の家とやらが車がなくとも辿り着ける程度には近場にあるものだと認識したので、観賞を進めていくうちにあまりにも遠くて笑ってしまった。バカすぎ。
まあ関係破綻してる夫婦だからこの妻は余程夫を信用出来ないんだろうな…と、はぐれた時のすれ違いについてはイラつきはすれど納得出来た。
それでも終盤はこれでもかと家族愛見せつけてくるくらい関係修復するんだから隕石ってすげーよな!
しかし今後異常事態ばかり起こるであろう崩壊後の地球に、これほどアクシデントに弱い一家が生き残った所で一体何の役に立つんだろうかと観賞後物凄い虚無感に襲われた。混乱の中冷静に職務を全うしていた心優しい軍人達の方が圧倒的に貴重だったのではなかろうか。
暫くして嫁父に貰ったライフル結局使ってねえじゃねえかと思い出してゲラゲラ笑いましたけど。
私の倫理観だと病人より罪人の方が受け入れられないので、限られた人間しか生き残れない事が決定しているなら殺人という業を背負った主人公は生き残るべきではなかったかなと思う。
途中燃える車から今まで微塵もなかった謎の正義感を発揮して謎の人物を謎に救出するという謎シーンがあったが、一人の命を救えば中盤殺った一人はチャラ、みたいな白々しさが透けて見えるだけで何の感動もなかった。
終盤ムリヤリ飛行機停めてムリヤリ乗せてもらうシーンなんかは重量オーバーという折角の根拠も出ていたのだし、主人公が犠牲になって妻子だけ助けるという展開の方がまだ納得出来たような気がする。
それこそ嫁父に貰ったライフルでパイロット脅して妻子だけでも乗せてもらう、とか鬼気迫るものがあれば多少は理解出来た。面白かないけど。
というか銃で脅されたわけでもないのに全員乗せてあげちゃうパイロット優しすぎませんかね。重量オーバーとは何だったのか。
そんな優しい彼が死んだのはただ尺を埋めるためかと思うくらい意味のないシーンだったと思う。
主人公が無理を言って出発を遅らせたせいで圧倒的善人であるパイロットが死ぬ。また一つ主人公の業が深まるだけで、本当に何の得もない無駄なシーン。
とにかくこの主人公、「自分はどうなってもいい!だから妻と子供だけは…!」ではなく終始一貫して「他人はどうなってもいい!(自分含め)家族を助けてくれ!」というスタンスなのである。まあついでにいえば妻もなんですが。
それは大変人間らしい思考だとは思うが、映画では見たくないかな。
人間のそういった汚い部分までリアルに描きましたというのならば、作品中に散見される他の矛盾ももっとリアルに描いてくれと言いたい。
折角の隕石描写が薄めなので地球滅亡のパニックよりも家族愛を描きたかったのかなと受け取ったが、その肝心の家族がどいつもこいつも自分勝手ときたらもうどこを楽しめばいいのか分からない。
映画館で観てたら相当ガッカリしてたと思うのでプライムビデオ無料で本当に良かった。