劇場公開日 2021年6月4日

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「意外! “実家のような安心感”…とか思ったのを反省するくらい、人間の嫌な部分が見えてくる」グリーンランド 地球最後の2日間 文化的雪かきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0意外! “実家のような安心感”…とか思ったのを反省するくらい、人間の嫌な部分が見えてくる

2021年6月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ジェラルド・バトラー主演、隕石衝突によって地球崩壊のパニックを描くとくれば、もうなんか大体の筋は見えるし、あれだろ、ジェラルド・バトラーが腕力で地球崩壊をなんとかしてド派手にクライマックスだろ、“実家のような安心感”がある一作だ……そう思っていた。鑑賞して15分が経つまでは。

 バトラー演じる主人公が、少しばかり折り合いが悪い妻と息子とともに週末のパーティーを開く。そんなどこにでもあるアメリカの日常は、突如として破られる。空には数え切れぬほどの戦闘機が飛び交い、まるで「最終兵器彼女」のような光景が異常事態であることを何よりも雄弁に伝える。

 そして気心の知れた友人たちが集まるリビングで、状況はさらに一転。テレビには「主人公一家のみが“緊急避難者”に選ばれた」「これは政府による通知であり、選ばれた者にしか届いていない」「訓練ではない」と告げる無機質な文言が表示されていた――。

 このあたりの緊迫感が驚天動地の素晴らしさだし、これを開始15分くらいで見せつけてくる物語運びが天衣無縫にえげつない。一発で普通の映画ではないことがわかるが、さらにこの先の展開が他のディザスター映画とは一線を画すからのめり込んで観てしまう。

 喩えるならば、「ディープ・インパクト」の宇宙パートを全部削り、イライジャ・ウッドのパートをずっと描く感じ。“地球滅亡の危機に立ち向かうヒーロー”ではなく、“危機に徹頭徹尾振り回される普通の家族(主人公)”の物語なのである。しかもそのアプローチは現実主義。実際に起きたら普通の人々=我々には何が降りかかるのか?が究極のリアリティを以て映し出されていく。

 登場人物たちのなかには明確な悪人は存在せず、行動の原理はあくまでも「自分や大切な人が生き残るため」。その結果、人は人を平気で蹴落とし、巧まずして外道に堕ちるのである……。

 人間の嫌な部分をこれでもかと見せつけてくるようで、「実家のような安心感」とか思っていたのを反省するほど“食らってしまう”2時間だった。とてもおすすめです。

文化的雪かき