「命よりも大切なものとは何か」20歳のソウル ろこさんの映画レビュー(感想・評価)
命よりも大切なものとは何か
序盤に主人公の大義君の親友が校舎から身を投げ出しそうなシーンがあって、その姿に同じ年頃で他界された息子の同級生を重ねてしまい、最初からひどく動揺してしまった。最後まで観れるか不安が頭をよぎったが、映画公開前にラジオで聴いた幻冬舎の見城徹さんと秋山監督の話を思い出し、深呼吸して席に座り直した。大義君の病気が発覚する場面では、母親なら代わってあげたいと思うやるせなさを感じ、手術が成功したシーンでは、自分自身が病気から生還したときの気持ちを思い出し、生死にまつわるあらゆることを考えさせられた。市船soulのリズムは、魂を突き動かされるような前向きになれるメロディ。一度聞くと頭から離れない。大義君が彼女と二人きりの病室で、死にたくないと本音を漏らして涙を流すシーンは、無念さが痛いほど伝わってきて胸が掻きむしられた。何でもない、同じような毎日の繰り返しがどれほど幸せなことか。健康なときはなかなか想像出来ない。でも、大義君の「幸せになろうとするから不幸になる。ただ生きてるだけで幸せなこと」という趣旨の言葉がそれに気づかせてくれる。大義君はそれを悟って守り神のような存在になったんだと思った。自分に価値をつけるために一生懸命になるのはとても素敵なことだけど、生きてるだけで価値があるということも忘れずにいたい。いつか必ず死ぬ自分の命を、命よりも大切なものに使っていきたい。今を生きると決めて迷いを断ちきりながらいきたい。そんな想いにさせられた。エンドロールに流れるJasmineは讃美歌みたいだった。音楽と一緒に、TVで拝見した原作者の中井由梨子さんの情熱もスクリーンから伝ってきて、観終わってからしばらくは席から立ち上がれないほどだった。この映画は755というsnsから知って、そこでの奇跡も感じた魂に響く映画。