「面白く見ました!」そして僕は途方に暮れる komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
面白く見ました!
(完全ネタバレですので鑑賞後にお読み下さい)
この映画の主人公・菅原裕一(藤ヶ谷太輔さん)は、周りから彼の不誠実さや配慮のなさを責められると、途端に自分のやったことに向き合うことなくその場から逃げるように立ち去ります。
見てる観客からすると、責任感の欠如した文字通りの”クズ人間”だと思われる人物です。
この映画が面白いのは、そんな主人公・菅原裕一の”クズ人間”のルーツである父・菅原浩二(豊川悦司さん)に、彼が本質として行き着いているところだと思われます。
そして父・菅原浩二も、問題が起こるとその場から逃げて行く菅原裕一にとって元祖”クズ人物”でした。
このその人物の本質の底を、自身のルーツである父にたどり着くことで見せているところにこの映画の一つの深さがあったように思われます。
その上で、主人公・菅原裕一の彼女であった鈴木里美(前田敦子さん)が、菅原裕一と親友の今井伸二(中尾明慶さん)と浮気をしていたことが映画の最後に分かります。
もちろん鈴木里美の浮気は、菅原裕一のその場から逃げ出す身勝手さの期間から考えれば理解も出来ます。
しかし、鈴木里美の浮気相手が菅原裕一と親友の今井伸二であった点は、菅原裕一のクズさを批判していた2人からしても、菅原裕一を裏切っていてクズさは類似してあったのだと思われます。
そして映画のラストカットで菅原裕一はこちらを振り返り、笑っているようにも見える表情を浮かべます。
この映画のラストに救いのようなものが見えるとすれば、菅原裕一のような自分の問題から逃げてしまう”クズ人間”と同じように、人間は程度は違えど親友を裏切ってしまうような”クズ”の要素を持っていたということです。
もちろん、出来ればそんな人間の”クズ”さは改善出来れば良いに越したことはありませんが、どうしても残ってしまう”クズ”の部分を、私達は誰しも持ってしまっているという映画の着地だったと思われます。
私達は”クズ”の部分を完全に解消出来ないという意味では救われない存在ですが、一方で、みんな多かれ少なかれ”クズ”の部分を抱えて生きているという意味では皆もそう変わらないという点で救われてもいるのです。
この映画はそんなささやかな救いの光を灯して、菅原裕一の笑っているようにも見える表情を見せて閉じられます。
そこには人間理解の深さと広さの面白さがあったと思われました。
個人的にはしかし、とはいえ(映画の終盤で改心の兆しを見せたとはいえ)問題から逃げ出し続ける主人公には共感できないなとの思いと、終盤に父含めた家族との団欒シーンからの話が多少長いなと思われて、この評価の点数になりました。
しかし深さのある面白い映画だとは一方で思われました。