「未履修(テレビ版)を見ていない人には難しい+突然数学ネタ(解説入れてます)」あなたの番です 劇場版 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
未履修(テレビ版)を見ていない人には難しい+突然数学ネタ(解説入れてます)
今年198本目(合計262本目)。
「ジョップリフターズ・オブ・ワールド」と入れ違いに10分差で。
今週は明日(土曜日)、明後日(日曜日)と各3本予約済みなので、今年で200本を超えるのは確定です。そのときにはまた、「その区切りで良かった映画」など書こうと思います。
さて、この映画。原作が存在する(テレビドラマ版?)ようなのですが、もうそれを知っているというのが前提になっているような気がします。最低限の登場人物の説明もなければ突然事件は起きてしまうので、何がなんだかわからない間にどんどん話が進み、まぁ後半からは(誰が誰かわからなくても)謎解きものという観点で見ることはできますが、かと思えば「ドラマ版には存在するらしい」数学ネタを突然映画版でやってきたり、「未履修の人」を徹底的に放置しようというのがちょっと…(一応この点は後で書いておきます)。
ただ、元が2時間30分と長い上に削れると思える点もあまりなく、そこにテレビ版未履修の人の配慮を入れると4時間コースになりかねず、それもそれで今のコロナ事情の趣旨を没却しているということにもなります。一方で、アニメ版ですが「ヴァイオレット~」のように原作を知らない人でも10分で説明があったような作品があることも「また」事実なのであり、要は「この映画はテレビ版を見ているのが前提ですよ」ということを言うなら言うとしないと、知らない人は最初から最後までおいてけぼりになるんじゃないか…と思います。
※ ただ、物語の大半はこういう「登場人物の説明が足りずに混乱する」という類型より「船舶での事件での謎解き」にあてられるので、「結果的に」どうしようもなくなる、ということはない(「答え合わせ」も常識的な範囲で、原作を読まないとまるでわからない、というようにはなっていない)点は救いかな…と思います。
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(減点1.0) 2時間30分級とかなり長い映画で、どこを削るかというのはまた難しいのだと思いますが、原作を知らない人はまず最初からおいてけぼりになるので、かなり精神的にきついです(それらは「常識」扱いされている)。
もちろんそういう映画を否定もしませんが(いわゆる、テレビ版を見て下さった方向けの「ボーナス枠」的な映画)、実際にここでも高い評価を得ているのは「原作を知らない人も知っている人もさくっと復習して本格的に映画に入っていく」類型なのであり(「ヴァイオレット~」など)、そこは参考にして欲しいです。
また、テレビ版では数学ネタが突如断りなく出てくるようで、それがまたこちら、劇場版でも出てくるのですが、元ネタ知らないと???状態になる(減点1.0どころではすまない。ちなみに出るだけであり、ストーリーには一切関係しないという「オチ」)という問題もあり、今週は2番手以降になってしまうのではないかな…と思えます。
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▼ 数学ネタ(フィボナッチ数列とその隣り合う数を分数にしたときの極限)
最初に1,1と並べます。次の3番目以降は前2つを足したものを書きます。この場合だと1+1=2 なので、1,1,2 となります。4番目は前2つ、つまり1+2=3 なので、1,1,2,3 となります。5番目はやはり 2+3 なので5で 1,1,2,3,5、6番目は8(=3+5)、7番目は13(8+5)、8番目は21(13+8)…となります。これをフィボナッチ数列といいます(1,1,2,3,5,8,13,21,34,…)。
このとき、ある隣り合う2つについて、前を分母、後ろを分子にした分数を考えます。たとえば「3と5」は隣接しているので、前の3を分母、後ろの5を分子にした 5/3 という分数を考えることができます。同様に 8/5 や 21/13 という分数を考えることができます。
この数列(フィボナッチ数列)は無限に作り出すことができ、したがって上記の分数も無数に存在しますが、どんどん作っていったとき、ある値に近くなっていくのではないか?という疑問が生じます。この値は実際に特定の値に限りなく近づきます。値は (1+√5)/2 です。
これが映画内で述べている 「 f_[n+1] / f_[n] [as lim n->∞] = (1+√5)/2 」のことであり、この (1+√5)/2 を「黄金数」といいます。きれいな比率になることで知られ、建築様式などでも応用されている内容です。
※ 「黄金数」の類推から「白金数」や「白銀数」というような語もあります。
ただ、このことを突然「フィボナッチ数列」という語もなく出てくるので、未履修の人は完全に???状態で、これはなんだかなぁ…という印象です。
ここに書いてあるのは高校3~大学1年程度の初歩的な話ですが、もっとマニアックな話でなかった分まだマシであり、なぜに「未履修の人がいることも想定しないのか」がかなり謎です(全員が全員、この映画を見る人はテレビ版を見ていると推知するのか、あるいはフィボナッチ数列の隣接2項の比の極限など常識とでも言いたいんでしょうか…)。
この点に関しては、さすがに「配慮が足りない」のが過ぎているんじゃないか…というところです。