「歴代アニメ版ゲゲゲの鬼太郎史上最もエグく救われない世界観。よくぞ描いたという怪作。」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 TAKEさんの映画レビュー(感想・評価)
歴代アニメ版ゲゲゲの鬼太郎史上最もエグく救われない世界観。よくぞ描いたという怪作。
この世の中でありとあらゆるタブーと言われることを煮詰めた蠱毒のような作品。
小さい頃から鬼太郎を見てきて、原作に触れ、ルーツを知っているぼくからすれば『そうきたか!』『そこまでやるか!?』『よくぞ描いてくれた!』と思わせる内容でした。一般的なゲゲゲの鬼太郎とは仲間の妖怪や敵の妖怪が何種類もわんさかお祭りのように現れて強大な敵とヒーローの鬼太郎が人間を助けるのが王道、むしろそれが当たり前な感覚であったが、これはこれまでの鬼太郎の常識を全てぶち破る作風になっているのが衝撃でした。妖怪はたくさん出るけど登場控えめ、グロあり、ホラーマシマシ、敵は人間 と色々新感覚な内容で、かと言って適当な作風なのかというとそんなことなく時代背景やタバコなどの細かい設定、各キャラクターの描写のうまさが際立ってました。のちの目玉のおやじであるゲゲ郎もデザイン、アクション、声優さんのぴったり具合も素晴らしい。主人公の水木も過去の描写やゲゲ郎との交流、人間味を感じさせる動きもこの作品の清涼剤となってくれた気がしました。
この作品のすごいのはエグさです。グロもありますがエグいんです。何度も言いますがエグいです。これまでのアニメゲゲゲの鬼太郎に登場する人間は妖怪に蹂躙される側ですが、この作品に登場する人間はろくなやつがいないなんてかわいい言い方なんて生ぬる過ぎて、村の人間も村のやってきたこともラスボスのやってきたこととやっていることが吐き気を催すくらい。ヒロインの生い立ちの救いのなさ、唯一汚れのない男の子のラストは救いなのか難しいところ。とはいえこれくらいしか救う方法がなかったとスタッフのコメントがすべてを表している。まさか鬼太郎シリーズでこれほどまでに同族嫌悪を発症させるようなことになるとは思いも寄りませんでした。最後の村人たちの因果応報の末路で『この殺される人たちの中には水木にいたずらした無垢な子どもたちもいるんだろうな〜』とかM生成に利用された人たちの中にはゲホゲホと苦しそうに咳をする屍人とそれを心配そうに見るとなりの屍人を見て『これって電車の中にいた席してた子どもとお母さんなんじゃ』と思うととても胸が締め付けられます。
ここまでの感想を書いておいてなんですが気持ち悪い、後味が悪い、二度と見たくない、という訳ではなくラストの感動的な救い、水木とゲゲ郎の種族を超えた友情、鬼太郎の両親の夫婦愛、エンドロール後の原作とのリンクさせる演出はまた見たくなるような作品でした。