「沼ると深い」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 くらげさんの映画レビュー(感想・評価)
沼ると深い
私は横溝小説のファンだし、水木作品のファンだし、鬼太郎(もとい目玉親父)大好きなのでとても楽しめました。…が、レーティングPG12。血は飛び散るし、殺され方もそれなりに惨殺ではあるし、因習もあるので、大人として13歳の甥にはまだ見せたくはないかなーというのが本音。
時は昭和31年。
敗戦の記憶と喘ぎが薄れはじめ「もはや戦後ではない」という高度経済成長期が目前の…そうは言っても清濁合わせ呑んだ日本。今よりも夜や闇が人の近くにあった頃が舞台。
いやはや、かつての親父殿ときたら。
美丈夫だし、身体能力は高いし、情は深いし。
「荒事はやめるんじゃ」
といいつつ、必要ならば大百足を振り回して投げ飛ばすし、裏鬼道を叩き潰す。かと思えば
「人の真剣な気持ちをもてあそぶようなことは…それだけはしちゃいかん」
と水木をさとし、妻を「きれいな女」と思い出してほろほろ涙をこぼす。(泣き上戸)
自身が捕縛されても「儂はどうなっても良いから妻を自由にしてくれ」と言う情の深さ。
かつての経験から、理不尽に虐げられないために、力をもとめていたはずの野心家の水木が目の前に「会社を2つ、3つ持たせてやろう」「もっといい服を着ろ」「御殿に住んで運転手付きの高級車に乗れ」「美酒に美食、美女を味わえ」と力を得ることで手に入るものを具体的に提示されたときに放つ「つまんねぇなぁ!!!」
国が滅ぶ瀬戸際で、人間の国のために、幽霊族のゲゲ郎が犠牲になる必要はない、ほっとけ、という水木に
「生まれてくる息子が生きる世界じゃ、儂がやらねばならん」とゲゲ郎はその身を依代にすると告げて、水木に妻と子を託し「早う行け」と促して水木と別れるから水木は知らないけれど、水木のことを「友」と呼び「お主の生きる未来をこの目で見てみとうなった」と友の未来までもを護ろうとするゲゲ郎のその末路たるや…
もともと、漫画の親父殿の姿を知っていたので、猫娘が猫姉さんに変化したように、親父殿イケメン化かー、と思っていたのですが、ちゃんと原作漫画に繋がったエンドロールで気付いたら良い歳した大人がガチ泣き。その辺を知っているとまた、色々感じ方も変わるかと。
それとは別に、風景の綺麗な映画だと思う。
村へ続くトンネルの暗さ、濡れた土、トンネルを抜けた先の夏の日差し、落ちる影の濃さ、田んぼを渡る風と蝉の声。蜻蛉、なびくとうもろこし畑。螢の飛ぶ水辺。流れ落ちる水。匂いの記憶まで呼び起こされるかのようで。←似て非なる田舎を知っている。
個人的には音声ガイドを利用した観賞もおすすめです。
(専用アプリ 無料 イヤホンは片耳推奨)妖怪の名前などを説明してくれたり隠れ妖怪教えてくれます。