「ゲゲ郎の決死の戦い、遠くに響く下駄の音、 カラ〜ン♪コロ〜ン♪カランカラン♫コロン♬」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲゲ郎の決死の戦い、遠くに響く下駄の音、 カラ〜ン♪コロ〜ン♪カランカラン♫コロン♬
予備知識なく観賞。
最新のTVシリーズの流れにある映画だったとは、ツユ知らず。
ネコ娘が美脚の大人なのと、目玉オヤジの声を野沢雅子が担当していることに驚いた。さらに、鬼太郎の声が峰不二子(沢城みゆき)だったとは!
TVシリーズの設定・キャスティングなのだろう…。
東映アニメーションが水木しげる生誕100周年の記念に制作したらしい本作は、なるほどの力作だった。
最近の超ハイクオリティーなアニメーションとは異なる、往年のセル・アニメ感を残した画面デザインで、日本最古のアニメーション・スタジオの意地を見た気がする。
ただ、私にしてみるとキャラクター・デザインがいただけない。こういう絵柄でなければ今世代に訴求しないのかもしれないが、もっと水木しげる画風で通して欲しかった。
ねずみ男(少年版)の絵柄が極端に浮いている違和感もあった。
原作キャラクターとアニメオリジナルキャラクターの不統一感は「ルパン三世」シリーズで顕著だが、「クレヨンしんちゃん」のように統一感を保ったシリーズもあるのだ。
私は、40年ほど前に水木しげる先生に直接サインを頂いた。何かのイベントでのサイン会だったと思う。戦争で腕をなくされた左の肩口で器用に色紙を押さえて、鬼太郎と目玉オヤジの絵をササッと描いてサインをしてくださった姿を思い出す。
予備知識なしとは言っても最初のTVシリーズはリアルタイムで観ているし、原作漫画も「墓場の鬼太郎」時代から少年マガジン誌上で断続的に読んでいた。主に理髪店の待ち時間にだ。
テレビで人気が出てからは、貸本屋で単行本を借りて読んだりもした。併せて、前身の「墓場鬼太郎」(少年マガジン以前の作品)の単行本も借りて読んだが、そっちは思いのほか怖くて初めの方しか読まなかったと思う。
やはり、悪い妖怪と戦うゲゲゲこそが私にとってはヒーローだった。
昭和31年が鬼太郎の生まれた年(という設定)かどうかは知らないが、この年を舞台にした本編では主人公の水木がやたらとタバコを吸う。水木が龍賀一族の郷へ向かう列車の中でも多くの乗客がタバコを吸っていて、意味深に咳き込む少女がいた。
そういう時代なのだが、今の若者は驚くだろう。
水木がゲゲ郎(鬼太郎の父)と初めて遭遇する場面だ。
「墓場鬼太郎」では鬼太郎もタバコを吸っていて、ゲゲゲのファンだった私は衝撃を受けたのを憶えている。
鬼太郎の誕生秘話的な触れ込みの本作に、原点回帰を期待したのは間違いだった。全くオリジナルな誕生前夜の物語だった。
だが、制作陣は原作を深く研究したのだと思われる。
幽霊族という設定は、テレビ化以降のゲゲゲでは妖怪と幽霊が明確に区別されているので違和感がある(アニメ第3期以降は知らない)が、鬼太郎漫画の初期は妖怪とは呼ばれず幽霊と呼ばれていた。つまり「オバケ」として一括りだったのだ。テレビの主題歌でも「オバケは死な〜ない〜🎵」と唄われている。
更に、水木しげるの戦争感を出すことにも注意が払われていると感じた。これは水木しげる生誕100周年記念なら欠かせないテーマだったと思う。水木しげるは戦争の不条理を多くの随筆で訴えていたのだ。
敢えて言えば、もう少し本筋にこの反戦テーマを反映させられなかったか…と、思う。
ストーリー自体には不完全さを感じた。
龍賀一族の設定が序盤の横溝正史的な土俗的因襲と血縁の因縁を感じさせる雰囲気から、物語が進むに連れて妖怪を超える異形の超自然的な存在にエスカレートしてしまい、やや収拾がつかなくなった印象だ。バトル・アクションを入れなければならない作劇の都合もあるだろうが、伏線の未回収・ストーリーの破綻を感じざるを得ない。
前述したキャラクター・デザインの点もあって☆は辛めの採点となったが、アクションに迫力もあって面白かった。
この映画の最後に片目の赤ん坊が墓の下から這い出てくる場面が描かれているが、これが「墓場鬼太郎」の最初の場面だったと思う。抱き上げる人間(=水木)はいなかったと思うが。
紙芝居時代や貸本屋時代は「妖怪」という単語自体が世間では一般的でなくて通じにくかった、と水木先生が仰っておられましたものねぇ。
「幽霊」「おばけ」「悪魔」の方が大衆に伝わりやすかったんでしょうね。
日本に「妖怪」という言葉を広めたのは正に水木先生だったわけですものね。
原作とアニメキャラクターの不統一感への想いは非常に共感です。(鬼太郎、ルパンに限らず)
ですので、ついつい「私はアニメファンではありません。漫画好きです。」なんて余計な拘りを表明しちゃうんですよね、他人様にしてみりゃどーでもいい違いだとは思うんですが(笑)
まぁ、本作に関しては水木先生への敬慕と鬼太郎愛が溢れておりましたので好意的に鑑賞出来ました^ ^
kazzさん、共感とコメントありがとうございます。
この作品では、墓の下から這い出てくる赤ん坊(鬼太郎)を
水木が抱き上げてますが、「墓場鬼太郎」では違っています。
水木は一度は「気味が悪い」とその場から逃げ出してしまうの
です。
一方、生まれた息子を案じた鬼太郎の父の亡骸からは目玉がこ
ぼれ落ちて動き出し、鬼太郎が生まれた場所に置き去りにされ
ているのを知ると、鬼太郎(生まれたて)を水木の家まで道案
内して連れて行く… このような展開でした。(※)
水木は母と腐しているのですが、この母親もなかなかおおらか
な人物です。
この赤ん坊はどうしたのかと息子(水木)に問うのですが
” 家の前に捨ててあった ” との返事に
” ああ そうかい ” と、淡々と受け入れます。
困っている赤子を放っておけない時代だったのでしょうか。
(※)
貸本漫画時代の「墓場鬼太郎」が復刻されていて、電子書籍で
読めるようになっています。(全6巻 KADOKAWA刊)
鬼太郎の生まれるエピソードが載っている1巻だけとりあえず
購入して読んでいます。・_・
kazzさん、共感&コメントありがとうございます。
水木しげる先生生誕100周年記念作品で、しかもこの舞台設定なら、キャラデザはもっと原作に寄せてほしかったですよね。でも、こうして新作を公開してくれるだけでも感謝です。
ルパン三世は、TVアニメを見ていた私のような人間でも、あの『カリオストロの城』の印象が強すぎて、脳内ではあれがオリジナルとなって刷り込まれてます。
〝なんと気持ちのいい連中なんだ〟の名セリフとともに。
私は古いテレビシリーズしか知らないのですが、京極夏彦さんの描く水木しげる先生のイメージからこの作品を見てました。でも新旧を問わず、さまざまなイメージで語られる作品自体の生命力は凄いと思います。映画館も若い女性が多くて意外な驚きがありました。
こんにちは。
今年も宜しくお願い致します。
点数は辛めですが、素晴らしいレビューです。
キャラデザインは昔のテレビを観ていると、違和感はありますよね。
時代の流れでしょうがないのかもしれないですね。