劇場公開日 2023年11月17日

「なめてました。驚きました。」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 pipiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0なめてました。驚きました。

2023年12月7日
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鑑賞方法:映画館

興奮

知的

幸せ

最も馴染み深い鬼太郎はTVアニメ第1&2シリーズ。(特に第2はよく再放送していたし)
だから、自分にとって「ゲゲゲの鬼太郎」とは社会風刺やアイロニー色の強い社会派作品。
だから第3シリーズが始まって「ユメコちゃんってなに?!」
「なんで、ぬらりひょんが妖怪のラスボスなの?」
「ただの幼児向け、ちびっこヒーローアニメじゃん!」
と思って、そのうち見なくなってしまった。
(アニパロコミックス潮田弘子の「無明童子」は買っていたけどwww
この本、知ってる人、いるかなー?)

だから今回、100周年記念作品制作と聞いてもTVアニメベースとのことで
「どうせ最近の商業向けお子ちゃま対象じゃないの?」と気にかけていなかった。
ところがどっこい、まったく幼児向けではなく、むしろ往年の水木ファンを喜ばせるとの評判。
遅ればせながら鑑賞と相成りました。

さて、いきなり「犬鳴村かよ?」ってスタート。
ちょっと待って?それなら「恐怖回避バージョン」でお願いしますw

いやいや、こちらの方々「犬神家」の皆様?長男のなんか麿な人もスケキヨさんぽいし。ひのえさんはちょっと悪霊島のふぶきっぽい?
手毬唄は目玉親父を湯に入れる為だけに出てきたんだろうけどw
そのあとも、おどろおどろの横溝文学オンパレード、
タタリじゃ〜!って聞こえてきそう!
鵺の鳴く夜は恐ろしい〜
決して1人では観ないで下さ〜い!
(これは違った、サスペリア)

あ〜、昨日たまたま諸星大二郎の古い作品数冊読んでてよかったー。
耐性付いてたから助かったわw
ホラーは苦手だけど、幻想文学、民俗学、それとミステリーは大好きなワタクシ。でもそれらって「怪奇」ってキーワードを介してホラーと凄く近い位置にあるのよね(涙)

鑑賞後に知ったが鬼太郎アニメ4期は京極夏彦がシナリオ参加。6期は社会風刺強めなど原点回帰を意識した作りだったんだね。
(そう言えば「狂骨の夢」ってのもありましたね。)

それにしてもアクションシーンの鬼太郎パパのカッコいいこと!強いこと!
(この親父さん、なんて呼べばいいんだろ。目玉親父なんだけど、そう言っちゃうのもなんか違うし。
若親父?目玉パパ?
結構悩んだけどとりあえずこのレビューでは「鬼太郎パパ」でいきます)

そしてエンドロール。すべてが「鬼太郎誕生秘話」に見事に繋がる。
あれ?そんなレビューを以前に書いたぞ?
そう、あれば007カジノ・ロワイヤル。
「前日譚」を創造することで、過去のすべての不整合や辻褄合わせにカタをつけ、有無を言わせぬ「説得力」を生み出す。
なんだか、発見されたオーパーツが歴史のミッシングリンクをピタッと埋めたような感動というか感無量というか言葉に出来ない想いが胸を打った。
しかも、007に比べて「鬼太郎」というのは時代の波に晒されて出版するごとに加筆や削除など修正を繰り返され続け設定も複数存在する。だから水木しげる全集の刊行は極めて困難!とされていた。
それを見事にまとめあげたのが講談社の「水木しげる漫画全集」であり最大の功労者、立役者が京極夏彦だ。

師匠と仰ぐレビュアーさんが書いておられましたが、今回の横溝ネタは「鬼太郎×京極」に気付かせぬ為のミスディレクションであろうと。
いやはや、自分も見事に引っかかってしまいましたw
京極夏彦と言えば作品に横溝正史を登場させてしまうほど横溝文学に傾倒しておられる御仁。
そっかぁ!だから横溝パスティーシュおてんこ盛りだったのですねー♪
(犬神家、八つ墓村、手毬唄、悪霊島、本陣、獄門島、悪魔笛、他にも色々な要素が入ってるけど、皆様はいくつ見つけられましたかw)

今回の映画に京極氏がどれくらい関わっているのかはわからないが、鬼太郎パパ&水木に京極堂(中禅寺)と榎さんが絡んだら非常に楽しそうだな、と空想を広げてしまったw

直前に「コーポ・ア・コーポ」を鑑賞したが「今の暮らしから這い上がる」「下層な奴だと蔑む(こちらは幽霊族ですが)」など共通するモチーフが心に残った。
また「見えてる世界がすべてじゃない」「目で見ようとするから見えない。片目くらいがちょうどいい」というフレーズも非常に印象深かった。
おそらく世界は「見えない世界が8割、見える世界が2割」くらいというのが真実なのではないだろうか。
また水木作品の「総員玉砕せよ!」も本作内にてそのまま使われていた点も強い反戦メッセージとして高く評価したい。

とりあえず往年の横溝映画再鑑賞&未鑑賞だった百鬼夜行シリーズの映像化作品をすべて観てから本作をもう一度観たいと思う。

数年ぶりに映画4本ハシゴ鑑賞したが、1番期待していなかった本作が本日のベスト1作品であった。
いやぁ映画って本っ当に面白いですね。

pipi
kossyさんのコメント
2024年5月29日

あ、ちなみに男ではなくて女子先生でした・・・w

kossy
kossyさんのコメント
2024年5月29日

返信どうもです。
そういう映画に関するエピソードなら俺も・・・
中学1年のとき、教育実習の先生が生徒を10人ほど集めて「みんなで映画を観に行こう」と誘ってくれたのですが、その映画が『ダーティハリー2』でした。
女の子もいっぱいいたのに、こんな映画を選んでいいのか?と観ていて思いました。完全に暴力とおっぱい映画でした・・・

kossy
kossyさんのコメント
2024年5月29日

野沢雅子に対して『奇跡の人』にも言及するなんてさすがpipi様。
京極夏彦も脚本に参加なんて知りませんでしたよ。
俺も同じく子どもの頃のseason2までしか見てないと記憶してますが、色んな事情があったのだと察します。

kossy
pipiさんのコメント
2024年2月10日

三夕さん

コメントありがとうございます〜♪
いやぁ、つぶやいてみるものですね。ご存じの方に出会えて嬉しいですー。
本作、猫娘のビジュアルの良さがマイナス方向に気にかかる、というレビューも多いですが、無明童子に鍛えられていたらまったく違和感ないですよね(笑)

pipi
三夕さんのコメント
2024年2月8日

アニパロの無明童子! 懐かしいです

三夕
kazzさんのコメント
2024年1月19日

pipiさん、コメントありがとうございます。
やはり鬼太郎アニメは第2期がメジャーですね。自分が子供の頃見てたというのもありますが。
最近はソフトとか配信とかがあるから再放送というのが少ないんですかね。
この映画は、よく水木一郎作品を研究されてるなと、思いました。
絵柄は、仕方ないんでしょうかね…

kazz
seiyoさんのコメント
2024年1月1日

明けましておめでとうございます。

新年早々失礼します。

楽しくレビュー拝見しました。
4本梯子とは凄いです。

seiyo
もーさんさんのコメント
2023年12月23日

pipiさん、コメントありがとうございます。お陰さまですっかり忘れていた「カランコロンの歌」思い出しました(”消えた?”or“逃げた?”以前の問題)。

私も『故郷』の歌詞は高校生くらいまでは“ウサギ美味し”(正しくは“ウサギ追いし”)と思っておりましたから
子供ってそんなもんですよね😁

もーさん
じゃいさんのコメント
2023年12月8日

恐れ多いコメントありがとうございます。むしろpipiさんの特撮がらみの異様な学識と知見の深さには、心からの尊敬の念を抱かざるを得ません。ぼくは特撮にはたいしてはまらなかった子供だったので……自分はむしろ幼少時「鬼太郎博士」を自認していて、自分で考えた妖怪を大マスのノートにいっぱい描いては同級生に自慢しまくっていた赤恥の過去があって、今回の映画はそういう自ら思い出さないように封印してきた黒歴史と向き合う体験でもありました(笑)。
また素晴らしい感想を読ませていただけるのを楽しみにしております!(息子さんを英才教育中のようで何よりですw)

じゃい
グレシャムの法則さんのコメント
2023年12月8日

すみません。
偉そうに書いたけど、私はまだ京極夏彦さん初心者です。
以前、『死ねばいいのに』で衝撃を受けたものの、なにしろほとんどの作品が分厚くて…って言いながらいきなり1400ページにチャレンジ‼️
ホント、自分はバカなんです。
妖怪好きはみんな大バカという前提で書かれているんですが、全然バカじゃないんですよね。読んでるこちらが巻き込まれたくなるような超オタクなバカばかりで、楽しいんです。

グレシャムの法則
Mさんのコメント
2023年12月7日

怖いの苦手で好きなんですね!
諸星大二郎って・・・まあ!

M