劇場公開日 2023年11月17日

「実はfateのスピンオフでしたと言われても納得する」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 木神さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0実はfateのスピンオフでしたと言われても納得する

2023年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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耳に入る好評と『ゴジラー1.0』との関連性、目玉おやじ主演のエピソード0が気になって鑑賞。結論から言うと犬神家の一族をTYPE-MOONシリーズに再編したような激烈ダーク物語だった。人間の憎悪と狂気が渦巻く“どうあがいても絶望”にまみれた暗黒世界で鬼太郎一家と善性を取り戻した水木だけが燦然と光り輝いている。そしてEDはしっとり系カランコロンの歌が流れ墓場鬼太郎(以下墓場)へと繋がるエピローグはとてもとても儚く鬱くしい。
妖怪より恐ろしい醜悪な人間模様と社会問題に踏み込む数々の物語で歴代最恐と云われた6期鬼太郎、定番エピソード『幽霊電車』もパワハラといじめを取り入れた話のまぁ後味の悪い事。それの劇場版となると推して知るべし、テレビ放送の制限も無くなり更に人間のどうしようもなさに拍車がかかる。人里離れ閉鎖的な村で執り行われる悍ましい因習、その村を取り仕切る一族の外道ぶりも凄まじいがそもそも住民もロクデナシという徹底ぶり、犬神家よろしく遺言読み上げからの財産争いの一連シーンはこの上なく醜い。更に鬼太郎の一族である『幽霊族』を犠牲にして日本繁栄が成った構図は流石に人類が邪悪すぎてドン引き、善よりの村人もいたものの皆それぞれの形で破滅したあたり蓄積した業の深さが垣間見える。
主人公の水木も最初はそんな人間の一人だったのは興味深い、戦争で嫌と味わった理不尽と無意味さの果てに生き残り他者を蹴落として栄達する競争社会ですっかり擦れた人格になった男が、目玉の親父との共闘の中で徐々に生来の善性を取り戻していく。終盤おやじのピンチに駆けつけ、大詰めの戦いで血みどろになりながら邪悪な因習に終止符を打つ姿に惚れた人は多いだろう、ツケははらわなきゃならんよね(゚д゚)(。_。)ウン。
人の欲望に翻弄され過酷な運命を辿った鬼太郎一家の物悲しさも心に刻まれている。行方不明になった妻を探しに入村した目玉の親父、当初は人間を信じていなかったが人間社会で生きた奥さんの考えと戦友の水木を通して人の善性を見出す。のほほんとし奥さんの惚気でゆるい部分もあるが戦闘では多勢相手に荒々しい戦闘でなぎ払い、未来を生きる息子と水木の為に身を犠牲にして滅亡を食い止める様は非常にカッコイイ、ミイラ男化の理由が壮絶すぎる。
墓場へと繋がる以上、鬼太郎夫婦の死は避けられないが忌まわしき村から脱出し僅かな時間でも見た目が変容しても愛は変わらず、最後まで睦まじく添い遂げたと思うと鼻がツンとしてしまう。6期鬼太郎のドライな性格も本作で明かされた人物関係を知ると頷くばかり、人への複雑な感情と水木の恩義で揺れ動く彼の心境はいかに。何にせよ鬼太郎家族にとって水木の存在は人を信じきる希望だったのは確か。
以上『ゴジラー1.0』との関連は戦後くらいじゃねと思うが記念作として一線を画した出来となっていた、かなーりしんどい話だが。

木神