劇場公開日 2023年11月17日

  • 予告編を見る

「「忘れる」と戦後は終わり戦前が始まってさしまう」鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 mdさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0「忘れる」と戦後は終わり戦前が始まってさしまう

2023年11月20日
iPhoneアプリから投稿

オタクの女性には絶対突き刺さるものが多い。
私はキャラクターデザインに惹かれて見に行った。
最新のテレビアニメの鬼太郎の知識などはゼロ。

個人的にいわゆるアニメ声のアニメ演技が苦手なのだが、今回は声優さんがどの人もみんな素晴らしく、特に主人公水木の木内さんの演技と声が素晴らしかった。何で上手いのだろう。全然存じ上げなかったのだが大ファンになってしまった。
あとは音楽が素晴らしい。

バディ要素、横溝+京極+椎名林檎的耽美と昭和因習世界観など、腐女子に突き刺さる要素が満載だ。

水木しげるの従軍体験、昭和の悪習(喫煙や血液銀行など)も容赦なくもりこまれている。比べるのもアレだが、例えば山﨑貴の甘く浄化された昭和感よりは数万倍も真摯さを感じる。

ただ、一見ミステリだが謎解き要素はないし、説明不足の部分やヒロインのキャラクターの掘り下げ不足な部分もあり、「一般映画」として視聴するとそこまで出来が良いとは言えまい。「大人向け」と謳われていて確かにそういう要素はあれど、宮崎駿やスラムダンクのように普段アニメを見ない大人の鑑賞に耐えられるかと言われれば決してそんな事はない。
この映画を一般観客(普段アニメをみない)が鑑賞する際は、あくまで「日本のアニメ」の水準を念頭に多少の忖度を必要としながらならば、かなり観やすい映画だというものだと思う。

⭐︎⭐︎⭐︎

だが、同時期に、戦前、戦中、戦後を描いた映画がこれほど立て続けに公開されたのすごい。
「ゴジラ−1.0」「ほかげ」「窓ぎわのトットちゃん」(あの花〜は未鑑賞)そして本作。
本作とゴジラ、ほかげには敗残兵が登場し、いずれも悪夢にうなされる様子が描かれる。
そして、ほかげと本作ではそんな敗残兵によろ権威への抵抗が描かれる。
ただ、日本の加害性について触れているのは本作のみだ。

この映画の大きなメッセージのひとつに「忘れないで」という事があると思う。
戦争の体験記憶を持つ人がどんどんいなくなっている。
そうやって忘れる事で、戦後は終わり、奇しくも徹子の部屋でタモリの言っていた新しい戦前が始まってしまうのだ。
ゴジラ−1.0とほかげには「戦争を終わらせる」というセリフが共通して登場する。
戦争が終わり、戦後になる。そして、戦後はいつまでもあり続けなければならない。忘れないで。
そのために、語り継いでゆく鬼太郎がいるのだ。

md