配信開始日 2022年3月24日

「個々の花びらに想いを重ねて、降りしきる心模様に涙が止まらない」桜のような僕の恋人 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5個々の花びらに想いを重ねて、降りしきる心模様に涙が止まらない

2022年4月6日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

幸せ

萌える

久々に家でワンワン泣いた気がする。こういう手の映画は弱いとは分かっているけど、この純度の高さには抗えない。はぁ…まぶたが痛い。笑

思い返せば、最初の緊急事態宣言で観た『君の膵臓をたべたい』も家で大号泣。次第に力を失っていく現実と、他人が故に踏み込めないもどかしさ。脚本は同じ吉田智子さんらしく、パターンと言えば軽薄に聞こえそうだが、構図は少なくとも似ているように見える。当然ながら、そうしたモノには弱い訳だ。

だが、ここまでスコアを上げたのは、やはり概念の使い方だろう。原作は未読のため、ほぼ無知のまま入ったこともあり、そこにやられっぱなし。時間や瞬間、そして老いの概念が絶妙に混ざり合うことで、写真の一瞬、漠然とした恐怖、行き場のない藻掻きが写る。それでいて、2人を取り巻く周りの人の言葉がドシッとくるので油断ならない。分かっていても、重層的に魅せてくれるのでクライマックスに涙が止まらなかった。

また、NETFLIXの強みも随所に感じる。名の強いキャストを脇に携えつつ、適役の配置で作っていく。さらに、行き届いたディティールの細かさは小さな画面からでも良く伝わる。それでいながら、ショウゲートの博報堂DYミュージック&ピクチャーズが制作に入り、TOHOスタジオも名を連ねるなど、実は邦画として総力を挙げているのも伺える。だから、実は大手配給を凌駕する可能性を持ちながら、純度の高い邦画になっているのだ。ネトフリのポテンシャルが高いことを改めて知らしめている。

主演は中島健人さん。ヒロインには松本穂香さん。中島健人さんってこんな柔らかい演技が出来るのか…思わず舌を巻いた。喜怒哀楽の中にも不器用さが混じっていて、直向きな青年にジャニーズのカラーは出ていない。ホントに役者としても凄いのだと唸るばかり。ヒロインの松本穂香さんは、いよいよ真骨頂かもしれないと思った。結構ずっと追っているが、特殊メイクも相まって、葛藤や息に老いの徒労感が混じる。どのシーンにもオーラと輝きがあって、それを逃したくないとずっと見てしまった。

昨日桜を見に行った。風に舞い、ひらひらと床に化粧を始める花びら。来年は何を想うだろう。見上げたピンクの美しさに、時の軌跡と刹那を重ねて。

たいよーさん。