「師匠イーストウッドから受けた影響がありありと」マークスマン 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
師匠イーストウッドから受けた影響がありありと
『マディソン郡の橋』以来、数々のイーストウッド作品に携わり、『人生の特等席』では監督を務めたロバート・ロレンツ。監督第二作にあたる本作を観ていると、その序盤で気付かされることがある。苦難の連続で肩を落とし、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる主人公のキャラクターが、イーストウッド映画の主人公とそっくりなのだ。今年70歳になるリーアム・ニーソンも今回はアクション控え目。その代わり、この映画では少年と共に育むさりげないドラマシーンが記憶に残る。特にテレビでイーストウッド主演『奴らを高く吊るせ!』(68)を眺めながら、二人がわずかな言葉を交わすくだりは、それが映画全体の評価を左右するものではないにせよ、三者の変則的共演という何かしら面白い瞬間を目撃してしまった喜びが観客の胸に明かりを灯す。おそらくロレンツは、アクションよりもよっぽどこのような人間味あふれるドラマ醸成の方が得意なのではなかろうか。
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